(58) 京佃煮と京菓子「永楽屋」 《義悳》
日本橋の「永楽屋」本店の書刻看板です。
ケヤキの大板に平彫りで緑青を入れ、義悳書と題識があります。永楽通宝を表裏あしらった暖簾が眼を引きます。印は上に「永楽主人」下に「義悳」とあるので、創業者・斎田永三郎の書、義悳は先祖が細川家の御典医だったときの名で、今に伝えているということです。「悳(トク)」は「徳」字の篆書形、「徳の異体字」と辞書に記されていますが、異体というよりは古形なのです。名前の読みとしては「あつし、ただし、のぼる」などさまざまあり、永楽屋では「よしただ」と読んでいるようです。
創業は昭和21年(1946)で京都河原町四条に開店しました。もともと永三郎は菓子職人ではなく、商人だったので佃煮と菓子とを分けて売り出しました。ところがこの取り合わせがともに日本文化の大本である米と茶によく合うことに着目、「佃煮と菓子」というコラボの商品開発につながりました。それぞれの専門店では思いつかない発想です。
東京に進出したのが昭和41年(1966)で、この看板はそのときのものです。
商品は「一と口椎茸、花ちりめん」などの京佃煮と、「柚子こゞり、琥珀栗」などの京菓子で、なかなか多彩、あまから詰め合わせがおすすめです。聞くところによると向田邦子さんのお気に入りで、京都河原町の本店から取り寄せていたらしく、日本橋でも買えたのをご存知なかったのでしょうか。
■京佃煮と京菓子「永楽屋」東京店
〒103-0023 東京都中央区日本橋本町1-4-1 ☎03-3241-3868
日本橋三越の向かい側、二本裏通りにある。昭和通りに近い。現在は三代目。
掲載日時 2016 年 08 月 26 日 - 午後 06 : 28
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