(53) 「京橋公園」の印章表示
これは板に彫ったものではありませんが、我々の意表をついたものなので取り上げます。恐らくそうザラにはないでしょう。ご覧のとおり足元に切り石が転がっているだけで、看板の役目を果たしているのかどうか分かりません。公園の表示は別にあるのですから。大きさは印面が40×40センチ、長さ1メートルです。
しかしこの巨大印章はちゃんと文字が裏返しになっており、朱文印にはなっています。こんな表示方法は印章店にもないでしょう。実際に押すことは不可能だし、第一重くて屋根にのせるには始末が悪い。公園ならでは、なのかもしれません。
はんこ屋さんからすれば、印は紙に捺印するためのもの、印面を鑑賞するものではありません。印刻家ならこんな楷書風の篆書は彫らないし、こんな印石もありえない。書家も裏返しには書かないし、石屋も字を裏返しにはしません。 そこで誰もが思いつかない新機軸が生まれたというわけです。
だからこれは常識にとらわれない自由な発想の人だと思います。多分印章業界とは無縁の人、印刻家とも無関係、書家、石屋などとも縁のない「素人」でしょう。
私はこういう「素人的発想」がどちらかというと好きなタイプでして、出来の良し悪しは別として、足をとめて「面白いなあ」と感心してしまいます。石であるから、この存在感はなかなかのもので、看板として一応は用をなしています。ただ惜しむらくは足元に置くしかないので、ちょっと変な場所に「ウッチャラレ」て粗末な扱いになっています。
■中央区銀座一丁目25-2 私の子供のころにはここに京橋小学校があった。25メートルに満たない変則なプールがあって、築地小にまだプールがないころこのプールを借りたものだった。今は公園のうしろに京橋中央プラザが建っている。矢田中央区長の母校だが、皮肉にも廃校に携わったことになる。
掲載日時 2016 年 04 月 20 日 - 午前 09 : 25
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