てんち げんこう うちゅう こうこう
長文の冒頭にふさわしい雄大な書き出しである。
「天地(てんち)」は人間にかかわりあう世界すべてをひっくるめて表現する言葉である。人間にかかわりあう、と言ったのは中国では「天地人」というセットで世界を考えるからで、天の字形も大という人形(じんけい)の上部を横棒(もしくは丸)で表している。
「玄黄(げんこう)」はこれまた、玄(まっくろ、くらやみ)から黄(まばゆく明るい色)まで、すべてをひっくるめて言っているので、「明暗すべての色がある」と解釈できる。 従来の解説書では「天は玄、地は黄」と分けて解釈する。なぜなら黄河があって中国の大地は黄色いからだ、というのだが、古くから黄色は天子の色で、中国では地の色に限っていない。また天は「玄」だけではなかろう。またそうであれば「天玄地黄」というべきであろう。従って、私は「天地・玄黄」と読みたい。すると次の句とのつながりがよくなる。
「宇宙(うちゅう)」は天地よりももっと範囲を広げた世界。陶淵明や杜甫の詩にも「宇宙」の語があるから、この単語は決して新し
い言葉ではないようだ。
「洪荒(こうこう)」は洪(あふれる)荒(あれる)であわせて「あふ
れかえって、荒れまくっている」という意味。
世界はすべての色に満ち充ち、もっと広い宇宙はあふれかえ
り、わきかえっている。(以下訳文は斜体で示す)
【字形説明】
黄 上部はクサカンムリではないが、そのように書く楷書《※》もある。曂のツクリのように旧活字は一本多いが、これは篆書字形《※》に近づけた形である。
荒 中央部を「亡」としない。Lを上に突き出す。篆書字形《※》ではLの右に人を書くからである。白川先生の辞書でも、この活字形の誤りを指摘している。
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