かいん あくせき ふくえん ぜんけい
災禍は悪事の積み重ねによるものだし、福は善行の慶びによるものだ。
因も縁も「~によって起る」という意味で、字を違えただけである。「禍」はわざわい。「福」の対語である。「慶」は「よろこぶ、めでたい、祝う」の意味で、「善慶」と熟語にして「めでたいこと」を意味するとも考えられるから、あえて「善行のよろこび」と言わなくてもよいだろう。ここは一応前句に合わせておいた。
これは素朴な道徳律だが、人間に対する説得力という意味では不朽不滅の箴言であろう。世の中から犯罪を減らすには、警察まかせではだめで、善いことをすれば善い実りがあると幼児期からタタキこむ必要があろう。新聞は「悪事」ばかりを取り上げず、「善行」をもっと見つけてほしいものだ。
【字形説明】
禍 ツクリの上部は活字のように「冎」形が普通。シメスヘンは左右に並ぶので形を変えている。
因 初唐までの定形は「囙」であった。『干禄』で中を「大」とした。
悪 初唐までの定形は「西」に「心」である。「亞」は篆書字形をそのまま四角く表示したもので、せっかく楷書スタイルに合わせてリファインされた伝統を無粋なものにしてしまった。
積 ツクリの上部は「丰」のように下に出しているが、篆書字形に合わせたもの。出ないほうが普通である。
縁 ツクリの上部は「彑」や「立」の点のない形などが使われていたが、『干禄』ですべて「ヨ」形に統一した。しかし現行活字にはまだ「彖」形を残すものがある。(蠡彝彜堟掾など。)
善 『干禄』でも羊の下は「古」で、二本ひっかけてはいない。『五経』『九経』にも記載がないので、それが定形となっていたと考えてよい。二本かけるようにしたのは『康煕字典』からであろう。
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