48 節義廉退 顛沛匪虧

48 節義廉退 顛沛匪虧

     せつぎ れんたい  てんぱい ひき

 節度をわきまえた正しい行い、清廉潔白な謙譲心、この二つは火急の際にも失うことなかれ。

 「節・義・廉・退」とひとつずつ訳すこともあるが、前句に合わせて「節義・廉退」と区切っておこう。
廉はいさぎよいこと。退はへりくだること。

 「顛沛(てんぱい)」前句の「造次」と同じ意味で、とっさの場合をいうフレーズである。顛も沛もひっくりかえること。顛は本末顛倒の顛である。沛は沼地を意味し、泥土に足をすくわれるイメージらしい。
 「匪」は非に同じで、非(あら)ざれ、という否定辞。同じ字を使えないルールなので、これまでに「勿、莫、罔、靡」などが使われた。
 「虧(き)」は「欠ける、こわれる」。

【字形説明】
 伝統的には竹カンムリはなく、すべて草カンムリであった。『干禄』で竹を区別したのである。表記の天溪の字は下の「即」を難しく書いている。これは「既」の字の左には見られるが、「節」に流用されることはほとんどない。訂正すべきだろう。下図1に「干禄」の記載を示す。上俗下正。図2に「既」の字例をあげておく。「干禄」の序にある。
 羊の部分は「篆意」を加えて下部を出している。出さずともよい。「我」の部分は二画目を分けて書いている。これも無理して分けずともよい。参考までに「干禄」にある「俗」とされる字形(上)を図3に示しておこう。「我」の左を「ノギヘン」にする。これは隷書に見られる形で、楷書にも用いられた。
 中の「兼」は二通りの書き方がある。下に四点打つか、活字のようにタテの二本棒を下に伸ばすかである。「干禄」では点を打っている(図4)が、「五経」では伸ばして(図5)「凡そ謙、嫌の類は皆な兼に従え」と言っている。
 ツクリは表記のように「真」とする。しかし「五経」(図6)で上を「ヒ」として篆書に一歩近づけ「顛、慎の類もこれに従え」という。最後は「康煕字典」で下の横棒を折り曲げて「眞」とし、完全な篆書形にしてしまった。
 市はナベブタに十ではなく、タテ棒を一本貫く。図7(五経にある)
 トラガマエはすでに述べたので、もうお分かりだろう。「干禄」の記載を図8に出しておく。上俗下正である。ことわっておくが、「正」というのは「干禄の主張する篆書風造字」のことである。

  図1      図2      図3     図4      図5     図6      図7      図8
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