23 罔談彼短 靡恃己長

23 罔談彼短 靡恃己長

     もうだん ひたん  びじ  こちょう

 他人の短所を談(かた)るなかれ。 自分の長所を恃むなかれ。

 罔も靡も否定辞。「罔」は網で、覆い隠して見えなくなること。「靡」はなびくと読み、草木がなびくこと。風のままに動き、自分の意思がないこと。どちらも「なかれ」と読む。同じ字を使わない原則なので字を変えたのである。「なかれ」に用いる字はこの他にも、「無、亡、勿、莫」などがある。発音がどれも似ているので、原義を離れて「仮借」文字として使われる。

 「恃」は「あてにして待つ」こと。得意だからとて油断しているとそれがアダになる。この二句はみごとに対句となっており、「彼の短」「己が長」とわかりやすい。
 三日前に行われた總選挙の自民党みたいだ。


【字形説明』
 「亡」の部分を活字のようにではなく、「L」字形にすることは「荒」「忘」ですでに記した。
 ギョウにんべんをこのように書くのは、すでに(3)の「往」の字にもあった。
 左は「矢」が正しい。隷書では一画省いて「夫」のように書くこともあり、ここはそれを用いたのである。「疑」という字の「ヒ」の下の「矢」を「夫」とすることも、楷書ではよく使われる。楷書は独自の省略形をさまざまに考案して、字形の美を追求したことを忘れてはならない。
 「巳(み)」は上部の口を閉じる。「己(おのれ)」は空ける。「已(い)」は中間、と習ったことがあるかもしれないが、意外にこのあたりの区別はあいまいで、古典を見ると適当に書いている。


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