じょぼ ていけつ だんこう さいりょう
(人倫の続き)女は貞潔を見習いなさい。男は良き才覚を見習いなさい。
潔は「サンズイ」がつくが、ここはつかない。なくても「きよい、いさぎよい」の意味に変わりはない。サンズイのつく潔は後段に「執扇円潔」に出るのでここでは使わなかったのである。
慕も效も字を違えているが同じ意味。「みならう、範とする」という動詞である。たまには命令形に訳してみたい。
「才良」は「才量」と読み替えて「才覚と度量」と訳すのが一般的らしい。しかし「度量」とはなるまい。(したい気持ちは分るが)。ここは「良きインテリジェンス」というほどの意味であろう。良才を才良とあべこべにしたのは「りょう」が、これまでずっと8字ごとに韻を踏んでいるからである。
【字形説明】
慕 下に心を置いたのは前句の「恭」にリッシンベンの形を使ったからである。これは相互に入れ替えが可能であるが、敢えてこうしなくてもよい。
貞 下の二点はハネ上げて下ろす。行書風の書き方である。点をハの字に書いて、左下に小さくハラう形に比べると、かっこうがよい。
絜 はじめのヨコ三本の真ん中を貫くタテ画は、下に突き出ている。(活字は下に出ない)。これは篆書学者がやかましく言う「契約の割賦」を「刀」で、二分する意味であり、突き出なければ意味をなさない、と言う。白川静氏もこの活字形を「理由のない改変は誤字に外ならない」と手厳しい。「害」のタテ画も突き出すべき字なのである。
效 今の教育漢字では「効」とするが、表記の書が正しい。たしか芥川龍之介が「私は效を効とは書かない」と何かに書いていた。効という活字が出回ったころには、抵抗感があったのであろう。『干禄』では「効」は「功」の、「效」は「放」の誤記となることを指摘しているだけで、「效」については言及していない。「功」を「効」と誤記することが当時はあったのであろう。
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