16 遐邇壹體 率賓帰王

16 遐邇壹體 率賓帰王

     かじ いったい    そつひん きおう

(名君の統治下では)遠くの人も近くの人も一体となって、賓客をつれて王に帰属する。

 遐も邇も見慣れない字だ。遐(か)は「遠い」という意味、邇(じ)は「近い」。「道は邇(ちか)きに在り」のように用いる。後段に「遠」も「近」も使われるので、こんな難しい字になった。

 賓(ひん)は客のこと。ご来賓を「率いる」というのは偉そうに聞こえるが、同等以下の客も賓と言ったらしく、「そのとき来た人も同道して」という意味であろう。

 広い国土のあちこちから帰属、臣服する人たちが、名君のもとに我も我もと一団となってやってくる。脱国者が出るようでは先はない。


【字形説明】
 初唐では「迩」と書いた。爾のゴチャついた部分は楷書の美意識では堪えられなかったのだろう。さっぱりと「尓」にしてしまった。しかし『干禄』では「尓は通、爾が正」とグロテスクな形に改めてしまった。行草書は「迩」形を残している。 
 今の活字では「壱」となるが、これは最近の略字。
 今の活字では「体」。本字の體とはかけはなれすぎている。體の異体字として古くからあったというが、本当だろうか?
 同じ「そつ」でも「卒、卆」は別の字で、「しぬ、おわる」の意味。「ひきいる」の意味ではない。率(そつ)は「りつ」とも読む。
 左のヘンは篆書では「ハシゴ形」なのだが、異体字はさまざまあり、初唐までに確定しなかったらしい。『干禄』で一気に篆書形に合わせてしまった。しかしこの昔がえりは定着せず、現在では活字の「帰」のように簡略化されている。表記の天溪の字形は、上部が『干禄』形、下部は略した形となっている。

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