15 愛育黎首 臣伏戎羌

15 愛育黎首 臣伏戎羌

     あいいく れいしゅ   しんぷく じゅうきょう

(天子が徳治を行えば)黎民(れいみん)を愛しみ育て、戎(じゅう)や羌(きょう)という異民族までも臣伏するようになる。

 「黎(れい)」は黍(きび)を鋤(す)く形であることから、もともとは農民を意味した。黎首は黎民(一般庶民)と同じ意味で、「民」の字はすでに13で使ったので「首」にしたのである。

 戎(じゅう)、羌(きょう)は西方に蛮居する異民族。中国は周囲の異民族の侵入に絶えず脅かされてきた歴史がある。彼らを臣伏させなければ中国の安定と平安はない。天子の徳が問われる所以である。

 このあたりは古代の聖天子を引き合いに出して、善政の何たるかをさまざまに述べている。「千字文」の主要課題である。


【字形説明
 この字形は上部が活字と違う。篆書字形に近い形が表記のもの。(下図)今日の活字形は『五経文字』で定められた形を踏襲する。旧字形のほうが篆書形をとどめているのだが、わざわざ改めている。
 もとは「目」の形である。「望」という字も「亡」の部分をもとは「臣」と書いた。(亡では意味をなさない)。臣とは「目を上げて見る」形。見る対象は神で、本来は王族出身の聖職者の身分を表す語であった。彼らが次第に王室に服属する過程をたどったことで「臣下」の意味に転じたものと思われる。
 古い楷書では最後に点をつけた。草書ではこの点を残している。『干禄字書』では点はなしとしている。

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