しせい もんじ だいふく いしょう
(この伝説の黄帝の時代に)始めて文字が制定され、またようやく衣裳を着服するようになった。
文字や衣服は黄帝の時代に創出されたことになっている。文字も持たず裸同然の原初的な生活をしていた人間に「文化」をもたらしてくれたわけである。
千字文は「同字を使わない」という文字遊戯から発し、当初から書道の「手習い」の実用をかねていたから、「始制文字」の四語は外せない句で、これを習う人は「文字は蒼頡(そうけつ)という人が鳥の足跡を見て思いついたんだよ」というような古い言い伝えを子供に教えたであろう。一説には「縄を結んだ」のが最初の文字ともいう。文字の起源は20世紀になって「甲骨文字」が発見されるまで謎であった。いずれにしても「文化」の第一に文字と衣服があてられているのは興味深い。聖書だって「いちじくの葉っぱ」がまず登場するくらいだから。
【字形説明】
乃 音は「だい」で「すなわち」と訓ずる。接続詞である。同じ「すなわち」でも時間的に短いのが「即」、長いのが「乃」である。「ようやく、やっと」という訳語をあてた。字形は「耳たぶのようにぶらりと垂れ下がった形」とされてきたが、そうではなく「弓の弦を外した形」つまり「旧状のままにしておく」ことを意味する。文法的な用法に使う文字はもとになる字がないので、「仮借(かしゃく)」つまり「二義的使用」である。字形の表す意味(旧状のまま)と同じではないことを知っておこう。
服 この字形は唐の『五経文字』で改訂したもので、今日の活字はこれを踏まえている。しかしそれ以前は異なる字形(私の言う旧字形)が《※》使われており、書の世界では旧字形の楷書がよく使われる。
裳 上に「衣」の字があるので、ここの衣は点とハライを合わせ、最後をトメた。
「11 始制文字 乃服衣裳」の印刷用画面はコチラ
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