会員の作品
冬の薔薇
冬の薔薇 まくらべにひそと にほふさへ
たくらみをれば 人はさみしき (小池光)
現代歌人の歌を書くことが少なくなった。著作権をうんぬんする時代だから「注意したほうがとい」と忠告されることもある。しかし、歌人がいったん本に出して発表した歌を書くことが禁止される社会であってはならない。むしろ自分の歌がこんなところで人を感動させているのかと嬉しく思うであろう。共感するからこそ筆をとって書こうという気持ちになる。まあ、大量に作って儲けているのなら別だが。小池氏の反応を知りたいものだ。
さて、歌の意味だが、何を「たくらんで」いるのかは書かれていない。薔薇をひそかに贈ってくれた人のたくらみなのか、それを逆手にとって寝ている人がしかける「たくらみ」なのか。たしかに、薔薇の香りをよそにそんな思案そのものが寂しい。現代人の心の断片ではある。
作者 野呂純子
かな 書刻 イチョウ板 彫込 110×35
出典 小池光
制作 2003(青溪書刻展出品作)
番号 会00051
作者 : 4.会員
掲載 : 2009/08/22