目次:青渓会 会員
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144 村雨
書刻 行書
作者 野呂マリ子
神代ケヤキ板 彫込
28.5×20
制作 2018
番号 会00144
友人の茶室の庵号「村雨」。
板は神代ケヤキ。埋もれ木となって地面で鉄分を吸ってやや鉄色を呈する。広葉樹は木目が水分を通す管になっているので、ここにも鉄分が定着し木目がくっきりと浮かび上がる。半ば化石化して彫るには堅い。
これを掲げた茶室の写真がほしい。
作者 : 4.会員
掲載 : 2019/08/13 上に戻る
143 春秋嘉饗置古酒
春秋の嘉き饗には古酒を置く
隷書
作者 中島好美
書刻 朴板 浮出彫 緑青
金箔押 16×61
出典 乙瑛碑(いつえいひ)
制作 2019
番号 会00143
初めての書刻作。乙瑛碑を全臨し、集字して七字彫った。
①ノミを使っての彫り。
②黒の下塗り。
③乳鉢で水干絵具の緑青を撹拌。
④膠の湯煎。
⑤緑青の着彩と研ぎ出し。
⑥箔アカシと箔押し。
板を購入することに始まり、すべて初めての体験。
伝統の手わざの面白さと奥深さを堪能した。「嘉饗」は「よきうたげ」。
隷書(Rei-sho):classical script, second one of five letter styles(五書体)/ 作者(sakusha):calligrafer and maker:(中島好美)Yosimi Nakasima/ 書刻(sho-koku):wood carving of calligraphy/ 朴板(hou board):magnolia board/ 浮出彫(ukidasi-bori):
relief letters/ 金箔押(kinpaku-osi):sealing golden foil/ 地色緑青(ji-iro):back colour:green blue(roku-sho:緑青)/ size:16×61cm/ 出典(shutten):source:乙瑛碑(monument of itsu-ei): dated 153 AD, Eastern Han dynasty/ 2019/No.会00143/
【Literal interpretation】Always(春秋), it is worth nothing without old sake (置古酒) for attentive dinner(嘉饗).
作者 : 4.会員
掲載 : 2019/05/31 上に戻る
142 天朗氣清恵風和暢
天朗氣清恵風和暢
天朗(あきら)かに氣清く
恵みの風は和して暢(のび)やか(蘭亭叙)
隷書
作者 S
書刻 彫込 サワラ板
文字色 白緑 90×20
出典 蘭亭叙
制作 2018年
番号 会00142
初めての書刻作。板はサワラ。ヒノキと樹の外見は全く同じで、葉をひっくり返して見なければ区別がつかない。板材としても色は白く、水に強く、風呂桶にもなる。彫る時にタテに裂けやすいので注意が必要。板目なので両サイドに皮の部分が残り、自ずと額縁をなしている。 色は日本画の顔料としては代表格の白緑(びゃくろく)に少し碧緑を加えて地味にした。
作者 : 4.会員
掲載 : 2019/02/02 上に戻る
141 天朗気清
天朗らかに気清し(蘭亭叙)
隷書
作者 野呂マリ子
書刻額 枠浮出彫 欅板
金箔押 20×85
出典 蘭亭叙
制作 2017
第69回中央区書道展
番号 会00141
欅板への初めての挑戦。タモなどの彫りやすい板ばかり彫ってきたが、堅い板にも柔らかい板にない面白さがある。刃物さえしっかり研げば堅さは克服できるものである。
「蘭亭」にある有名句。「お天気」というだけあって天と気とはひとつのものである。地色は濃い赤である。
作者 : 4.会員
掲載 : 2017/12/23 上に戻る
140 清夜置酒臨前除
清夜置酒臨前除 清夜 置酒して前除(ぜんじょ)に臨む
罷琴惆悵月照席 琴を罷(や)めて惆悵(ちゅうちょう)すれば月席を照らす
幾歳寄我空中書 幾歳(いくとせ)か我に寄せん空中の書
南尋禹穴見李白 南のかた禹穴(うけつ)を尋ねて李白を見ば
道甫問訊今如何 道(い)え 甫 問訊す 今如何と
杜甫「送孔巣父謝病帰遊江東兼呈李白」
楷書
作者 中島好美
書額 紙本濃墨
35×76/50×96
出典 杜甫
制作 2017 中央区展
番号 会00140
◆前除の除は階段。前庭から家に上る階段。◆惆悵は悲しみ嘆く形容と注にあるが、ここはしみじみとした思いに駆られること。李白を思いやっているのである。◆空中書は空を飛ぶ魔法の手紙。◆禹穴は古代の帝王・禹が入ったという穴。
この詩は孔巣父という友人が江東に帰るにあたって別れを述べたもの。巣父は李白や杜甫とも親交があり、禹穴で李白に会ったら「最近どうしているのかい」と私(杜甫)が言っていた、と伝えてくれ、と言っている。
作者 : 4.会員
掲載 : 2017/09/29 上に戻る
139 知拓世
知は世を拓く
篆書
作者 林 郁子
Tシャツ プリント
制作 2017
番号 会00139
左袖に三字。会社の社是だそうだ。
写真では黒く見えるが濃紺。
柄や模様のないTシャツは案外少ないものだ。どこにプリントするかで頭をめぐらし、左そでに落ち着いた。目立たすぎずよろしいかも。
「知」のヘン「矢」の篆書字形はミニスカートの女の子が立っているようで面白い。「世」の字は垂れ目の顔に見える。
はじめて書く篆書もこんな遊び心を持って臆せずに挑戦したい。
作者 : 4.会員
掲載 : 2017/08/25 上に戻る
138 秋の野に
秋の野に 乱れて咲ける
花の色の ちぐさにものを
思ふころかな(紀貫之)
かな
作者 野呂純子
書軸 半懐紙タテ 濃墨
48×87/36×25
出典 紀貫之(古今583)
制作 2016 中央区書道展
番号 会00138
作者は中央区書道連盟の理事なので、展覧会には二点出品の義務がある。#131の作品とこれが今年の作。
貫之は言わずと知れた歌の大家。「ものを思ふ」の「もの」とは「物(ぶつ)」ではなく「もののけ」の「もの」。霊魂を意味する。それを語るのが「ものがたり」。ここはかなり鬱屈した感情を秘めているのではないか。死者、滅びた者たちへの同情と追慕。あからさまに言えない反体制的心情。王朝時代にはもっぱら「情愛」に用いられた。しかし恋人への情愛の歌なら「秋の野」は寂しすぎる。「物」の字をあてる本が多いがふさわしくない。
作者 : 4.会員
掲載 : 2016/10/19 上に戻る
137 一顆の沙粒あり
一顆の沙粒あり中に一個の世界を見
一朶の鮮花あり中に一片の天空を見
あなたの掌心あり裡に無限を把握し
一個の鐘點あり 裡に無窮を把握す(布雷克)
行書
作者 黒田 絢
書軸 濃墨 47×150/35×82
出典 William Blake(布雷克)
制作 2016 中央区展
番号 会00137
英詩人ウイリアム・ブレイクの詩(Auguries of Innocence)の漢訳である。訳者は張熾恒。1963年生まれの詩人で上海在住。読み下しているがもとは漢字だけで「あなたの」は「爾(尓)的」とあり、詩題は「天真之預言術」と訳されている。
身近かでちっぽけなものの中に永遠を見る、それが無垢なるもののみが感ずる予兆である。ブレイクの原詩は長く、これはその冒頭。下の英語と読みくらべてください。
To see a World in a Grain of Sand
And a Heaven in a Wild Flower;
Hold Infinity in the palm of your hand
And Eternity in an hour.
作者 : 4.会員
掲載 : 2016/10/19 上に戻る
136 万葉二首
いにしへの人にわれあれや ささなみの
ふるきみやこを 見れば悲しき
わが船は比良の湊に 漕ぎ泊てむ
沖辺な離り 小夜ふけにけり(高市黒人)
かな
作者 的場優子
書軸 全懐紙 濃墨
48×87/36×25
出典 高市黒人(万葉32,274)
制作 2016 中央区展
番号 会00136
高市黒人は岩波の古典文学大系では未詳の人。「ささなみの古き都」の荒廃を悲しんでいる。これは天智天皇の大津京のことで、壬申の乱(672)で天智の子・大友皇子が大海人皇子(天武)に滅ぼされて荒れ果てたのである。天武系王朝(天武→持統→文武→元明→元正→聖武→孝謙)の時代にはこんな歌を公けに口に出すことはあり得ない。おそらくこの歌は大友家持の筐底に秘蔵されていたのだろう。天武の血統が断絶し、晴れて天智系が復活した光仁→桓武天皇の時代になって、家持も復権して万葉集が日の目を見た。この歌はそうした王統の浮沈を思わせる。
作者 : 4.会員
掲載 : 2016/10/19 上に戻る
135 ときはなる
ときはなる 松のみどりも 春くれば
今ひとしほの 色まさりけり(源 宗于)
かな
作者 風間秀子
書軸 半懐紙 濃墨
48×87/36×25
出典 源宗于(むねゆき 古今24)
制作 2016 中央区展
番号 会00135
懐紙というのはその名のごとく「ふところ紙」である。とは言っても今のテイッシュやちり紙ではない。紙は貴重な高級品だった。平安朝の貴族は袍(ほう)という礼装に冠をつけていたが、その前ミゴロを大きくたくし上げて帯で留め、いわゆるフトコロがたっぷりあった。そこで懐紙を半分に折ってふところに携帯した。これは書簡にも、和歌の贈答にも幅広く用いられた。そこで半懐紙といえば36×25 ほど、けっこう大きい。全懐紙はその倍のサイズとなる。服装が全く変わった今日でもかな書ではこれが紙面の基本サイズとなっている。初心者はこうした伝統のサイズに身を置いて王朝時代を体感してほしい。
作者 : 4.会員
掲載 : 2016/10/19 上に戻る