
キッズコーナー
雨上がり
小嶌裕貴(3年)
書 半切 1/4
子供に書を教えるときの私の基準は、能楽の世界の「子方」である。ご存知かと思うが、能には子供が登場する。彼らにもちゃんとセリフがあり少しは謡もある。このとき子方は一本調子で、一語ずつ大きな声で「い・かに・べ・ん・け・い」と甲高い声で言う。ここには演出が一切なく、義経らしい声とか節回しとかを全く「させない」。
これは長い歴史の中でつちかわれてきた、すぐれた教育方針であろう。世阿弥の『遊楽習道見風』に出ているメソッドであるが、いずれ書におきかえて、引用しておきたいと思っている。子供にはこざかしいことをさせずに、ただ大きな声でまっすぐに声を出すことだけである。変声期になると舞台から遠ざけて、囃子の稽古などを加えるという。こうして名人が出るのである。
書も同じだと私は思っている。お手本なるものを与えてコマッチャくれた字を書かせる必要はない。それよりも、のびのびと筆になれることが大切である。正しい筆の持ち方と、筆を垂直に立てることだけを徹底する。
番号 児00011
作者 : 5.キッズコーナー
掲載 : 2009/06/06