キッズコーナー
般若心経

菊地裕一(小6)
紺紙金泥 74×54.5
小学生の写経というのは見たことがない。年寄りがするものだという固定観念があるからだろう。習ったことのない字が多いということもあろう。内容がわからないということもある。第一、写経する動機がない。たいていの人は何らかの信仰上の契機というものに後押しされて写経に向かうのである。
しかし子供が書いて悪いことはない。写経には純真な心が大切なのである。学校で習う字は勝手な略字で、点数のためのものに過ぎない。子供には「本物」を教える義務が私にはあると思っている。意味がわからないのは大人も同じで、写経する大人が「般若心経」の深遠な意味をすべてわかっているとは思えない。
要するに大人になって腑が落ちるように子供のうちに種をまいておくことも私の仕事のうちである。教室で大人が写経を習っているので、それを見て「僕もやりたい」といったのが「縁」である。
この練習は効果があった。金泥で光らせるためには筆をゆっくりと運び、金が穂先に下りてくるのを待たねばならない。筆の運びが慎重になり、字形も格段に緻密になった。小楷(しょうかい=楷書の小文字)は大人でも難しい。それに「金」は厳かな気分にさせ、緊張させ、真剣さが墨とは格段に違う。これで裕一はひとまわり大きくなった。
番号 児00014
作者 : 5.キッズコーナー
掲載 : 2010/01/23
