2010年6月 岡村友子の作品
色まさる まがきの

色まさる まがきの菊も をりをりに
袖うちかけし 秋を恋ふらし
むらさきの 雲にまがへる 菊の花
にごりなき代の 星かとぞ見る(源氏物語・藤の裏葉)
赤い料紙に菊の歌二首。
金砂子がふんだんに蒔かれているので、上のほうはハレーションを起こしてしまった。ヒカリモノの写真はカメラマン泣かせだと言われるが、全く素人の私には手に負えない。「色まさる」の歌のほうはすでに別の作品(番号 友00027)にも書いている。
光源氏はそろそろ引退を考えているが、位は昇りつめて準太政大臣までになる。この威勢を示すように、源氏の六条院に冷泉帝と朱雀院が一緒にお越しになった。院の「御幸」と帝の「行幸」とが同時に起ることは極めて稀である。前の歌はそのとき源氏(夕霧の父)が太政大臣(雲井雁の父)を菊に見立てて昔の紅葉賀を思い出して歌ったもの。あとの歌は太政大臣が源氏を菊に見立てて返した歌。二人の大物の歌のやりとりに夕霧と雲井雁の恋の決着がめでたく暗示されている。
巻名の「藤のうら葉」の「うら」は「末」の意味で「裏」ではない、と山岸註にあるから、出典名も正しく書けば「藤末葉」となろう。なお、山岸源氏では二首目を「にごりなき世」と漢字化している。この「世」は聖代のことだから、友子は上のように「にごりなき代」とする。書家も時には主張するのである。
かな 書額 砂子赤紙 濃墨 41×30
出典 源氏物語・藤の裏葉
制作 2005
番号 友00065
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2010/06/12 上に戻る
あらためて
あらためて菊の香れば蘭は花
愛弟子・大坪典子が独立して「香溪会」を設立したときに贈った記念作品。
新たな菊の香に蘭も花を添えた。菊も蘭も秋の季語。華が咲き乱れるせせらぎ(溪)の光景に見立てたのであろう。
書は友子で刻は天溪である。杉板にやわらかい峰彫り、胡粉を施している。彫りは正確無比で潔癖すぎるほどである。
「あ」は変体がなの「阿」、「香れば」の「ば」は「者」、「蘭は」の「は」は「盤」。
写真下方が暗くなっているのは私の素人写真だからで、実物はもっと明るい杉色である。
6月3日~6日の「香溪会書展」に飾られて私も初めて目にした。
かな 書刻 杉板 峰彫 胡粉 10×74
刻者 岡村天溪
制作 1980
番号 友00064
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2010/06/07 上に戻る
七つになりたまへば

(源氏)七つになり給へば、文始めなどせさせ給ひて、世にしらず、さとう賢くおはすれば、(帝も)あまりに恐しきまでご覧ず。(中略)匂はしさはたとへんかたなく美しげなるを、世の人光る君ときこゆ。(源氏物語「桐壺」)
光源氏が七つになった時の様子。上の釈文に「中略」とあるのは、本文の引用を割愛している、という意味で、上の作品写真に書いている文を私が略したということではない。ここの中略はかなり長く、山岸源氏(岩波)の3ページ分にもなる。
これは「源氏物語の世界」個展(2001)の出品作ではなく、第22回青溪会展(2004)の作。最後のくだりを上方に広々と書いて終わらせている。
かな 書額 全懐紙 39×30(本体)
出典 源氏物語「桐壺」
制作 2004
番号 友00063
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2010/06/04 上に戻る
