2010年1月 岡村友子の作品
年たちかへるあしたの

年たちかへるあしたの空のけしき、なごりなく曇らぬうららかげさには、数ならぬ垣根のうちだに、雲間の草、若やかに色づきはじめ、いつしかとけしきだつ霞に、木の芽もうちけぶり、おのずから人の心ものびらかにぞ見ゆるかし。ましていとど玉をしける御前(おまへ)は庭よりはじめ見どころ多く、みがきまし給へる御方々の有様、まねびたてむも言の葉足るまじくなむ。春のおとどの御前(みまへ)とりわきて、梅の香も御簾のうちの匂ひに吹きまがひて、生ける仏の御国とおぼゆ。(源氏物語「初音」)
このくだりは書家好みの文章でよく取り上げられる。六条院の正月の年賀風景。往時の風情が見事に描写されており、新春に飾る作品としての応用価値があるからであろう。作者もいくつか手がけているので、プロとしては得意の「出し物」なのである。
かな 額 料紙金砂子 46×34(本体)
出典 源氏物語「初音」
制作 2001(個展)
番号 友00056
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2010/01/23 上に戻る
ながつきつごもりなれば

ながつきつごもりなれば、紅葉の色々こきまぜ、霜枯れの草、むらむらをかしう見えわたるに、関屋より、さと、くづれ出でたる旅姿どもの色々の襖(あを)の、つきづきしき縫物・くくり染めのさまも、さる方にをかしう見ゆ。(中略)
(空蝉)行くと来と せきとめがたき涙をや 絶えぬ清水と人は見るらん
「え知り給はじかし」と思ふに、いとかひなし。(源氏物語「関屋」)
石山寺参拝の源氏と上洛の空蝉とが、逢坂山の関屋で偶然にめぐり逢う。晩秋の恋の再燃。
往く人帰る人、さまざまな人生がすれ違う「逢坂山」を背景に、源氏と空蝉との邂逅を設定した紫式部のあざやかな手法が冴える。「これやこの往くも帰るも」という百人一首の蝉丸の歌を思い出してください。
かな 料紙濃墨 半懐紙 (本体)45.5×30.5
出典 源氏物語「関屋」
制作 2001(個展)
番号 友00055
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2010/01/09 上に戻る
