2009年7月 岡村友子の作品
手を書きたるにも深きことはなくて

手を書きたるにも深きことはなくて、ここかしこの、点長に走り書き、そこはかとなく、気色(けしき)ばめるは、うち見るに、かどかどしく、気色だちたれど、なほまことのすじを、こまやかに書きえたるは、うはべの筆消えて見ゆれど、今ひとたび、取りならべて見れば、猶、実になむ、よりける。(源氏物語 帚木)
源氏物語には書に関する記載も多く、一般の人にはなんでもないところながら、我々にとっては見逃すことのできないくだりである。ここは「帚木」の巻で、雨夜の品定めのところである。馬の頭の言う書論で、「まことのすじ」は「うはべの筆」より優れているとのべている。さすがにこの時代の貴公子は書への見識の高さがあったのである。
かな 書額 紙本濃墨 (本体)30×42
出典 源氏物語 帚木
制作 2001
番号 友00050
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2009/07/19 上に戻る
からころも

から衣 きつゝなれにし つましあれば
はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ
田中健助商店の唐紙に書いている。江戸を代表する唐紙の老舗である。図柄はキラ(雲母)を混ぜた胡粉で、版画のように摺るのではなく、色を置いてゆく。ポテっとした味が唐紙に調和する。この色の置き方が濃墨の線を引き立ててくれることを知って、友子作品には同商店の紙を使用することが多い。社長田中純一氏は研究熱心なので、料紙の相談にも快く応じてくれる。かなを書く人は「襖紙」に無関心だが、実は襖は平安時代の置き土産なのである。
かな 紙本濃墨 (本体)29×29
出典 伊勢物語9(古今では業平の歌)
制作 1996
番号 友00049
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2009/07/04 上に戻る
