2009年3月 岡村友子の作品
色紙(10)万葉の花


右: 藤波の 花はさかりに なりにけり
奈良のみやこを 思ほすや君(万葉330)
左: なでしこが そのはなにもが あさなさな
手にとりもちて 恋ひぬ日なけむ(万葉408)
色紙は日本の誇る文化的遺産であり、これほど広く愛用されている書道用品は他には見当たらない。お祝いの寄せ書きにも、有名人のサインにも、かな書にも漢字書にも、多方面に愛されている。
しかしお手軽だからとあなどってはいけない。紙面に丁度良く納めることはそう容易いことではないからである。練習用色紙というものもあるので、本番前には試行してバランスがとれているか、よくよく確認したい。
10回にわたって色紙をとりあげてきたが、このあたりで一段落しよう。
かな 色紙濃墨
出典 万葉集
制作 2004
番号 友00038
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2009/03/27 上に戻る
色紙(9)万葉の花


右: 春のその くれなゐにほふ 桃の花
したでるみちに いでたつをとめ (万葉4139)
左: あをによし ならの都は 咲く花の
にほふがごとく いまさかりなり(万葉328)
色紙は簡単に掛けかえができるメリットを生かして使うものである。365日同じ色紙をぶらさげているのは芸がないわけで、そのために書き手も季節感を存分に発揮しようとする。また和歌はそういう需要にも充分応えられるふところの深さがある。
そろそろ桜の開花宣言を耳にする時節となった。上の二首は誰でも知っている日本の春の代表歌であろう。
かな 色紙濃墨
出典 万葉集
制作 2004
番号 友00037
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2009/03/21 上に戻る
色紙(8)万葉の花


右: 巨勢山の つらつら椿 つらつらに
見つつしのばな こせの春野を(万葉54)
左: 磯のうへに おふるあしびを たをらめど
みすべき君が ありといはなくに(万葉166)
かなの散らし書きはどこで改行しても自由であるから、書き手のセンスによってどうにでもなる。しかし原点にさかのぼって考えると、書かれているのは和歌であるから、意味の区切りをあまり無視することは望ましくないように思う。
つらつ/ら椿
のように書けば読むほうは、ん? となってしまうであろう。書は文学とも深いかかわりをもつ芸術であるし、和歌の心を伝えるものであるから、第一に読みやすい散らしを心がけたい。上掲の二枚は無理の無い改行を示している。
かな 色紙 濃墨
出典 万葉集
制作 2004
番号 友00036
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2009/03/15 上に戻る
色紙(7)万葉の花


右: かくばかり 雨の降らくに ほととぎす
うのはなやまに なほか鳴くらむ(万葉1963)
左: 梅の花 いまさかりなり 思ふどち
かざしにしてな いまさかりなり(万葉820)
右の色紙は「扇面色紙」といい、扇面をクローズアップした形。扇面全体に書くのとは字の布置が違ってくる。
左の色紙は紅彩箔が押されている。箔はいうなれば金属だから、絵具や墨がのらない。そこでドウサ引きしている。ただし店に置いてあるものは多くの人が触れるので、指の油がついているものがあり、書くと指紋が表れることもあるので注意をしよう。店員が包む際に触れることを恐れて、料紙を買うとき母は「私が包む」といい、鳩居堂くらいの一流店になれば「お包みなさいますか」と逆に気をつかってくれるものなのである。
かな 色紙 濃墨
出典 万葉集
制作 2004
番号 友00035
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2009/03/14 上に戻る
色紙(6)万葉の花


右: いざこども やまとへはやく しらすげの
まののはりはら たをりてゆかむ(万葉280)
左: 梅の花 散らまく惜しみ わがそのの
竹のはやしに うぐひすなくも(万葉824)
右の色紙は赤い台紙が見えているだけで縁の赤い色紙ではない。絵でいうマットの色も色紙を引き立てる重要な要素である。マットを自由に選ぶことのできる色紙額システムは私の知る限り存在しない。書道額縁に関してはこのように立ち遅れがある。最近ははがきサイズのものについてはかなり研究されるようになって、さまざまなものが出ているので、色紙もいますこしの辛抱かと思う。
かな 色紙 濃墨
出典 万葉集
制作 2004
番号 友00034
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2009/03/12 上に戻る
色紙(5)万葉の花


右: たびと(大伴旅人)
かくのみに ありけるものを 萩の花
咲きてありやと 問ひし君はも(万葉455)
左: しらすげの 真野のはりはら 往くさ来さ
君こそ見らめ 真野のはりはら(万葉281)
右の色紙は定型で、左は小ぶりである。このように「小色紙(こじきし)」とよばれるものもあり、大判の色紙もある。また「寸松庵色紙(すんしょうあん・しきし)」と言って三色紙のひとつに数えられる名筆の料紙をまねたものもある。大きさ、色、形、実にさまざまである。色紙ひとつをとって見ても日本人の感性は自由闊達で、ちぢこまっていない。書道界が閉塞しているように見えるが、本来的にはのびのびと書をたのしんでいた足跡にみちている。
かな 色紙 濃墨
出典 万葉集
制作 2004
番号 友00033
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2009/03/06 上に戻る
色紙(4)万葉の花


右:たかまどの 野辺のあきはぎ いたづらに
咲きかちるらむ 見る人なしに(万葉231)
左:秋さらば 見つつしのべど いもがうゑし
やどのなでしこ さきにけるかも(万葉464)
この色紙のシリーズは万葉の花をとりあげている。万葉植物園というのもあるくらい、万葉集に出る植物は数が多い。「秋萩」も「撫子」もおなじみの花だが、万葉歌人もこれを見て詠ったのか、という感慨がある。遠い昔の人が急に身近に感ぜられ、「野辺のあきはぎ」も「宿のなでしこ」も違和感なしにまぶたに浮かんでくる。
かな 色紙 濃墨
出典 万葉集
制作 2004
番号 友00032
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2009/03/05 上に戻る
色紙(3)万葉の花


右:わがやどの 花たちばなは 散りすぎて
珠にぬくべく 実になりにけり(万葉1489)
左:秋の野に 咲きたる花を および折り
かきかぞふれば ななくさの花(万葉1537)
既製品の色紙はご覧のようにいろいろな模様があり、これを撰ぶのも楽しいことである。日頃から色紙の豊富な店に足を向けて、眺める癖をつけたい。大量生産されていない柄は後になって買いに走ってもないことが多い。見つけて「これは」と思ったら即購入しておく。かなの場合はドウサ引きしているものを撰ぶこと。漢字用の画仙紙は墨の吸い込みがはげしく、かなには向かない。「あら、困った。画仙紙のを買ってしまった」というかたがあるかもしれない。その場合は裏に書けばよろしい。裏は金箔などが散らしてあって、表だと思われがちだが、正式には裏。でも裏に書いていけないことはない。店の人によっては「裏はダメ」とオドスこともあるが、無視してよろしい。意外に書きよいものである。
かな 色紙 濃墨
出典 万葉集
制作 2004
番号 友00031
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2009/03/01 上に戻る
