岡村友子の作品
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色紙(1)


以下「色紙」を2枚ずつご紹介しよう。色紙はハンディな様式として絵にも書にも、力士の手形にも、アイドルのサインにも、とさまざまに利用されていて、これぞ日本の美習と誇らしい気持ちになるが、書家の個展では一段低い扱いを受けていて、色紙を出品すると「手抜き」だと思われる。それは軸装や額装に比べれば「お安い」し、ありきたりの形式でもあるからである。しかし定型だからこそ「色紙」なのであって、そこにどう配置するかは、折につけ色紙になじんで過ごしている書家にとって、なかなか奥の深い研究テーマなのである。これは作者が2004年の6月に「青溪書苑」で発表した研究会展のものであり、取り上げた和歌はすべて「万葉集」である。
右 春の野に 鳴くやうぐひす なづけむと
わがへのそのに 梅が花咲く(万葉837)
左 妹がへに 雪かも降ると 見るまでに
ここだもまがふ 梅の花かも(万葉844)
かな 色紙
出典 万葉集
制作 2004
番号 友00029
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2008/12/14
松はもとより常盤にて

松はもとより常盤にて 焚き木となるは梅桜
きりくべて(謡曲・鉢木)
「きりくべて」のあとを省いている。「きりくべて御垣守 衛士の焚く火はお為なり。よく寄りてあたり給へや」という涙のくだりである。大切な鉢木を旅僧のために伐って薪にしてもてなす、佐野源左衛門常世の気持ちが「よく寄りてあたり給へや」に表れている。そこを書かず、前ふりだけで連想せよとの意図であろう。友子の作品にはそのような「途中切れ」の撰文がよくある。
「松はもとより常盤にて」については従来「江戸時代の改作」との指摘が定説となっている。松平姓に遠慮して「松はもとより煙にて薪となるも理や」を直したので意味が通らない。定説となった今でも、「煙にて」にしないところをみると、能楽界にはまだ松平様に遠慮が残っているらしい。
かな 書軸 紙本濃墨
出典 謡曲・鉢木
番号 友00028
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2008/11/28
色まさる まがきの菊も

色まさる まがきの菊も 折々に
そでうちかけし 秋を恋ふらし(源氏物語・藤の裏葉)
キラ(雲母)で雲を横になびかせた料紙。たての字がすっきりと見える。かなは紙とのかけひきがあって面白い。
源氏物語には100くらいの歌があると思うが、歌はほとんど書家には取り上げられない(数えたことがないので正確にはわからないが)。もちろん紫式部の作った歌である。どの歌も歌としてうまくない。はっきり言って下手くそである。小説の名手も、詩心は不得手であったと思う。まあ、小説の筋に合わせた添えものだから、古今集のようには行かないのだろう。文章は名文なのに不思議なことである。
かな 書額 鳥の子紙 57×44/41×29
出典 源氏物語・藤の裏葉
制作 2008(中央区書道展)
番号 友00027
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2008/11/13
鳴るは瀧の水

鳴るは瀧の水 日は照るとも たへずとうたり(謡曲・神歌)
シテの翁が退場すると「鳴るは瀧の水」と千歳が立ち上がって颯爽と舞う第二段。「たえずとうたり ありうとう とう とう」と地謡がつける。
番号友00007~00012を除いて、あとはすべて2007年に月光荘画室2で発表した作品。全20点のこれが最後。
かな 書額 鳥の子紙 砂子 14.5×15.5/46.8×47.8
出典 謡曲・神歌
撮影 ストウディオ・キャトル
番号 友00026
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作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2008/11/09
色はいずれ 似たりや似たり
色はいずれ 似たりや似たり
かきつばた 花あやめ(謡曲・杜若)
小品で板はバーズアイ・メイプル。メイプルシロップのメイプルである。ひこばえの点々が鳥の目に見立てられて、カナダではそういうらしい。日本の「かえで」とは違うようだ。日本の伝統ではこのような板は手に入らなかったこともあって、まず見たことがない。しかし最近は外材も数多く出回っており、面白い時代になったものだと思う。木質はねっとりとしており、細かな文字をきれいに彫りこむには適している。
ツルツル、ピカピカの肌合いにしたいと思って、塗料をかけては磨き、かけては磨きした。
文意は杜若(かきつばた、と読む)とあやめとは「似ている」ということ。 謡ではなかなかうるわしい「くだり」なのである。
変体仮名はわかりやすく三つ。た(多)、は(者)、め(免)。
かな 書刻 バーズアイ・メイプル 彫り込
11×58
出典 謡曲・杜若
刻者 岡村大
番号 友00025
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2008/11/08
色めく花衣 袖を連ねて行く末の

色めく花衣 袖を連ねて行く末の
雲かと見えて八重一重(謡曲・熊野)
熊野と書いて「ゆや」と読む。平宗盛の愛人の名。名にし負う京の春景色を謡った一節。絢爛たる料紙にはよく似合った詞章だ。
かな 書額 鳥の子紙 砂子 19.9×15.8/45.8×41.7
出典 謡曲・熊野
制作 2006
撮影 ストゥディオ・キャトル
番号 友00024
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作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2008/10/24
げにのどかなる東山

げにのどかなる東山(謡曲・熊野)
「ふとん着て寝たる姿や」と後世の人は喩えたが、東山を見て、よくぞ言いたり、と思うのは私だけではあるまい。室町時代にはもっと上品に「げにのどかなる」と謡われて、これも至言であろう。
語句が短いのでこの際、変体仮名を示しておこう。
に=丹、と=登、か=可、な=那、ま=万
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かな 書額 鳥の子紙 金砂子 12.0×12.2/44.9×45.1
出典 謡曲・熊野(ゆや)
制作 2006
撮影 ストゥディオ・キャトル
番号 友00023
作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2008/09/28
色めくは春のしるしかや

色めくは春のしるしかや(謡曲・羽衣)
本文は「げに花葛(はなかづら)色めくは春のしるしかや」であるが主語を省いている。これが書の面白いところで、もちろん謡をご存知の方なら「げに花葛」がすぐ思いつくのだが、知らなくとも一向にかまわない。「何が?」とイメージを泳がせれば、その人なりの世界を楽しめる。人によって「空模様」かもしれないし「風にただよう沈丁花の香」かもしれない。私など俗物は、銀座を歩く女性のファッションに、いち早く「色めく春」を感じてしまうのである。
なお作品紹介のトップ・番号「友00001」にも、もう少し長くここのところを取り上げている。作者好みの「くだり」なのであろう。
かな 書額 鳥の子紙 金砂子 16.1×16.5/37.8×38.3
出典 謡曲「羽衣」
撮影 ストゥディオ・キャトル
番号 友00022
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作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2008/09/21
千年の翠 手にみてり

千年の翠(みどり) 手にみてり(謡曲・高砂)
高砂の松は常盤の松。能の鏡板の松の絵はこの能のためにあるかのようだ。
思い切ってマットを真っ黒にした。意外とモダンな感じになる。紙の密度が高いのでこのような大胆なことも可能だ。もちろん字もそれに負けてはならないわけで、額、字、料紙それぞれがせめぎあい、自己主張しあって一つの世界を生む。
かな 書額 鳥の子紙 砂子 11.7×13.3/33.6×35.2
出典 謡曲・高砂
制作 2006
撮影 ストゥディオ・キャトル
番号 友00021
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作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2008/08/21
汲むや心もいさぎよき

汲むや心もいさぎよき 賀茂の川勢の水上は いかなる処なるらん
(謡曲・賀茂)
ワキ能としては颯爽と活きのいい神様が登場してスカッとする。神韻縹渺とした賀茂川の上流はさこそとも思える。
作品寸法は前が作品本体の大きさ / のあとが額の大きさ。端数があるのは特注のため、額屋さんが厳密に記載してくれたのである。普通は四捨五入して端数をなくすのであるが、額屋さんの意気込みもお伝えしたい。
かな 書額 鳥の子紙 砂子 19.3×27.0/42.2×44.9
出典 謡曲・賀茂
制作 2006
撮影 ストゥディオ・キャトル
番号 00020
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作者 : 2.岡村友子
掲載 : 2008/08/14
