岡村天渓の作品
一丘蔵曲折

一丘(いっきゅう) 曲折を蔵す(杜甫)
「曲折を蔵す」を注釈書では「折れ曲がった道がある」と解している。そうかもしれない。しかし、丘に道がある、というだけでは平凡すぎる。杜甫がそんな月並みな見方をするとは思えない。
ここは丘の起伏を描写している、と私は読む。「曲折」を「抱え持」っているという観察である。「一」とあるからには「さりげない、ふつうの丘」なのだが、よく見るとそこにもわずかな起伏がある。「蔵」はふところに入れている感じである。ちょっとエロティックな表現がよい。
誰ですか。「二丘」ならなおよい、などと怪しからぬことを言っているのは。そこを用心してわざわざ四角く書いているのに。
この金文は面白いが読みにくい。「丘」「蔵」は何となくわかる。「曲」は竹のようなもので編んだ籠の形である。小篆でもこのようになっている。問題は「折」のテヘンである。ニスイのように見える。実はこの字はテヘンではなく、「屮(てつ)」が縦に二つ並んだ形が原形で、草木を折る形である。さかさV字は天溪がどこかの金文から拾ってきたものらしい。
銀座・松崎画廊での第5回個展出品作。
篆書 扁額 浮出彫 120×28(くらい)
出典 杜甫「早起」
制作 1977
番号 天00066
作者 : 1.岡村天渓
掲載 : 2010/06/17
