岡村天渓の作品
百重泉

百重の泉(白居易)
百重は「ひゃくじゅう」でも「ひゃくちょう」でもよいだろう。いくつにもうち重なって流れる泉、こんこんと湧き出る水量と、ゆたかな水資源の広がりが、たった三字でイメージされる。さわやかな水音までも聞こえてくるようだ。漢字の世界というのはまことに面白い。
そこで書家としては線にその思いを託す。泉を絵にして実景を描くのではなく、筆跡の「線質」や「長短」や「肥痩(ひそう=太い細い)などにそのイメージを託すわけである。全体としてアタマに浮かぶさまざまな「泉」のイメージを喚起できればよい。できれば実景を上まわって、文学的な想念の世界に誘いたい。
世の中には変な書家がいて、「波」という字を絵のようにしぶきだらけに書いているような人があるが、それは絵描きの得意とする分野である。字など書かずに波をデッサンしてもらいたい。
草書 額 半切1/2ヨコ
出典 白居易
制作 1964
番号 00057
作者 : 1.岡村天渓
掲載 : 2010/02/06
