2010年2月 岡村天渓の作品
人生七十古来稀
人生七十 古来(こらい)稀(まれ)(杜甫)
日本人の平均寿命が延びて「古来稀」ではなくなった昨今であるが、男は大体70台でみまかるのではなかろうか。私なども80台は計算にいれないことにしている。女性はすごい。世界ダントツ一位だそうだ。人口密度がこれほど高く、しかも先進国で、これほど多数の長寿婦人を擁する国はない、と先日、ある講演会でそんな話を聞いた。だから、今の日本の80歳台のご婦人の生き方を見習いなさい、洗濯機も冷蔵庫もテレビもマイカーもなかった時代を再評価しなさい、いや、江戸時代がすばらしかった、環境破壊なしですよ、とやや強引な持ち上げ方をしていた。
自然破壊がなかったのは、破壊させるだけの科学技術がなかったからで、あってもしなかったのなら誉められもしよう。
さて、この作品は杉板に彫ったもので、文字色は「黄土」である。写真がボケているのは私の手ブレである。
行書 書刻額 杉板 平彫 30×70
出典 杜甫
制作 1970
静岡 N氏蔵
番号 天00058
作者 : 1.岡村天渓
掲載 : 2010/02/19
百重泉

百重の泉(白居易)
百重は「ひゃくじゅう」でも「ひゃくちょう」でもよいだろう。いくつにもうち重なって流れる泉、こんこんと湧き出る水量と、ゆたかな水資源の広がりが、たった三字でイメージされる。さわやかな水音までも聞こえてくるようだ。漢字の世界というのはまことに面白い。
そこで書家としては線にその思いを託す。泉を絵にして実景を描くのではなく、筆跡の「線質」や「長短」や「肥痩(ひそう=太い細い)などにそのイメージを託すわけである。全体としてアタマに浮かぶさまざまな「泉」のイメージを喚起できればよい。できれば実景を上まわって、文学的な想念の世界に誘いたい。
世の中には変な書家がいて、「波」という字を絵のようにしぶきだらけに書いているような人があるが、それは絵描きの得意とする分野である。字など書かずに波をデッサンしてもらいたい。
草書 額 半切1/2ヨコ
出典 白居易
制作 1964
番号 00057
作者 : 1.岡村天渓
掲載 : 2010/02/06
