
岡村大の作品
138 雕鐫窮歳年
雕り鐫(きざ)んで歳年を窮めん(元好問)
雕は音は「チョウ」彫の本字。鐫は「セン」と読む。どちらも彫るの意。カネヘンは道具としてのタガネの意味もある。2004年の年末から書刻に精を出して一段落した私の実感。「歳年を窮む」とは「たっぷり時間をかけてさらにこの道にはげもう」という感じだろう。
元好問は元代の詩人。原詩では「雕鐫」に皮肉な感情をこめて、修辞にこだわる詩人を指すが、ここは素直に「彫る」の意味のつもり。
楷書の横棒は中ほどで上にふくらむ覆勢となるが、シャクれる形を多用したらどうなるか、という実験で、それにともなってハネとハライを工夫したものである。当時はこのような異形の楷書にこっていたが、今ではマットウな書き方をしている。楷書は鳴鶴を基本に独自性をいかに盛り込むかが私の宿命でもあるので、ときどき新しい書きっぷりを試すことがあるのである。
印は「大所作」。作は篆書ではニンベンなしで使われることが多い。(右)。自刻である。
楷書 書額 紙本濃墨 36×66/16×49
出典 元好問
制作 2005
番号 大00138
作者 : 3.岡村大
掲載 : 2012/05/10