
目次:岡村大
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191 竹溪空翆
竹溪空翆(ちくけいくうすい)
篆書
陶板 呉須 14×19
焼成 八王子焼(工藤孝生)
制作 1998
番号 大00191
竹もせせらぎ(溪)も空もみな翆(みどり)である。「翆」は翡翠の色(ラピスラズリ)で緑でなく青でなく、中国人はこの色を古代から尊んだ。面白いことに世界中で珍重される宝石の文化は中国には根付かず、帝王がダイヤモンドの収集に明け暮れることは中国にはなかった。
むしろ「玉」のほうが高く評価された。崑崙山から出る「碧玉」はやはり翡翠系の色をしている。思うに中国にはダイヤモンドやエメラルドは産出しなかったからだろう。日本は黄金のジパングで金銀は産出したがダイヤは出ない。碧玉も出ない。装身具の材料にはやや貧しい国である。
作者 : 3.岡村大
掲載 : 2017/11/12 上に戻る
190 湖上船
湖上の船
❶ 篆書 ❷ 書刻 扁額 ❸ 神代タモ板 ❹ 彫込丸彫、文字色:白緑 ❺ 出典--- ❻ サイズ:97×24cm ❼ 制作 2001 ❽番号 大190
❶ oldest script ❷ wood carving in frame horizontal style ❸ damo board, buried lomg time in the ground ❹ letters intaglio, remains round island,
white-green ❺ source --- ❻ 97×24cm ❼ 2001 ❽No.D190
板はタモで埋もれ木で発見されると「神代」の名をかぶせる。ケヤキや杉に多い。「神代」がどのくらいの昔なのかを詮索するのは野暮というもので、数百年は地中か水中にあったのだろう。木は土中の鉄分を吸収して黒ずみ、重く硬くなる。この板は中心に杢目が出て、さながら波紋のように広がっているので、湖上の船をイメージしてみた。
作者 : 3.岡村大
掲載 : 2017/11/12 上に戻る
189 紙短情長
紙は短し情は長し
篆書
陶板 呉須 14×19
焼成 八王子焼(工藤孝生)
制作 1998
番号 大00189
板いっぱいに四字。呉須という絵具は陶芸の青色として最も古典的な素材である。ヨーロッパでも呉須を使う。私はイスラム陶器をひとつ持っているが、呉須の淡い青が非常に美しい。呉須は河原の石に含まれているらしく、自然のものは不純物が混じっているせいか温かみがある。上の作品は最近売られている化学的なもので、純度は高いが色はややきつい。
青く発色させるには最後に窯の入口をふさいで外部から酸素が入りこめないように蓋をして「還元炎」で焼く。炎は酸素を求めて窯の中をかけめぐり、最後に陶土そのものが含む酸素を燃やす。このとき呉須は青くなる。その頃合いが勝負どころらしい。幸い私は陶芸家におまかせなので樂をさせてもらっている。
作者 : 3.岡村大
掲載 : 2017/11/12 上に戻る
188 南雲
南雲
篆書
陶板 弁柄 字ヌキ 10×10
焼成 八王子焼(工藤孝生)
制作 1998
番号 大00188
額に納めたので皿には見えないが四角い小皿に二字である。
字ヌキのよいところは筆を離したときの墨だまりがないことである。このくらいの太さに書くとどうしても墨だまりによる黒い噴火口ができる。漢字は筆を矯めて書くので、サラサラと流し書きをする陶芸の「絵付け」のようには行かない。しかも粘土板の素焼きはたちどころに絵具を吸収し線が枯れやすい。これらの失敗を重ねて頭の中で仕上がりをイメージできるようになるには、ひたすら経験を重ねるわけで、工藤先生にもおつき合いいただいた。
作者 : 3.岡村大
掲載 : 2017/11/11 上に戻る
187 山中一半雨
山中一半の雨
篆書
陶板 呉須 17×15
焼成 八王子焼(工藤孝生)
制作 1998
番号 大00187
陶板への字入れに関してはこれと言った指南書もなく、伝統的な形式が定まっているわけでもない。文字を前面に押し出した作品例も多くはないし、書家もあまりこれに挑戦していない。魯山人のように料理をし、皿を作り、その上字を書くことにも自信がある人間はそう多くはないので、この分野は未開拓、いわば何でもありなのである。そこで思いつく限りの手法を実験する。
字が凸になっているのは型を作って押した。左右の模様は布をあてがい板を使って平らに押し付ける。絵具(呉須)がほどよく落ち込んで予想通りの焼き上がりになった。
作者 : 3.岡村大
掲載 : 2017/11/11 上に戻る
186 無量壽
無量壽
篆書
陶板 弁柄 字ヌキ
焼成 八王子焼(工藤孝生)
制作 1998
番号 大00186
蝋引きした字に弁柄を全面にかける。昔は本当の蝋を使ったので常に温めておくなどの温度管理が面倒で、また書いている最中にも筆に蝋が固まってこびりつき、書きにくいものだった。今はサラサラした「それ用の蝋」が開発されて格段に書きやすくなった。被覆性も完璧である。地色の弁柄は絵具としては赤いのだが、焼成によって鉄分が茶色に発色する。
陶板はそのまま紐をつけて下げても構わないが、落せば割れるし、見た目に不安定なので額に納めることが多い。
作者 : 3.岡村大
掲載 : 2017/11/10 上に戻る
185 明月来相照
明月来りて相照らす(王維)
隷書
陶板 弁柄 28×14
出典 王維「竹裏館」
焼成 八王子焼(工藤孝生)
制作 1998
番号 大00185
陶板作品。八王子焼窯元・工藤孝生先生の工房は相模湖にあり、そこで字入れをさせていただいている。中央が工藤先生。
陶板は面白いもので、すべてうまく焼き上がるわけではない。これは左右に亀裂が入っている。しかし風景としては山のようなので字句と併せて怪我の功名だと思えばよろしい。
筆をややヌキ気味に書いている。普通にトメるとどうしても墨だまりが強く出るからである。
作者 : 3.岡村大
掲載 : 2017/11/10 上に戻る
184 翦不断 理還亂
翦(き)りて断(た)たず 理(ととの)えて還(ま)た亂す(李煜)
篆書 聯額 料紙濃墨
20×60×2本
出典 李煜
制作 2017 中央区展
番号 大00184
「翦(き)りて」の「翦」は羽がついているから鳥の羽を切りそろえる意味であろう。剪定の剪に同じ。
「理」は整理の理。ととのえること。
断ち切ろうとしてもなかなか断ち切れず、きれいサッパリ整理してもすぐにもと通り。ゴチャゴチャ。
あなたの男性経歴のことではありません。
李煜(りいく)は南唐の最後の王。国を奪われ捕虜となって敵国の獄中で毒殺された悲劇の人。
詩では「是ぞ離愁の別れなる」と言っています。
私は今秋、実家を整理して不用品をゴミ出ししているのですが、なかなか捨てきれないものが出てきて、ゴチャゴチャになっております。そこで間防印は「自嘲」としました。
作者 : 3.岡村大
掲載 : 2017/10/14 上に戻る
183 百露下衆草
百露 衆草に下り
碧空 微雲を巻く
孤光 誰が爲に来たる
我と君との爲にするに似たり
(蘇軾)
篆書
書刻 栓板 彫込
拭漆仕上 29×38
出典 蘇軾
制作 2017 1月
番号 大00183
蘇軾『九月十五日観月聴琴西湖視坐客』の冒頭。
四句目のアタマ「似」は篆書では「以」とニンベンをつけない。意味は「らしい、ようだ」。孤光は誰の為にやってくるのか、あなたと私の爲に来るらしい。決まっているじゃないか、と言いたげなところがちょっと気にかかる。客に対する外交辞令であることが露骨すぎる。
篆書(ten-sho): oldest script of five letter-styles(五書体)/ 書刻(sho-koku): wood carving of calligraphy/ 栓板(sen board): kalophanax pictus/ 彫込(horikomi):carve letters in intaglio/ 文字白緑(letters colour):white green/ 拭漆仕上(fuki-urushi
shiage): coating clean Urushi (japanese lacquer) on the surfice of board /size: 29×38cm/ 出典(shutten):source: poem
by 蘇軾(Su shi)/ 制作:2017/ No.大00183
【Literal interpretation】Plenty of dew (百露) is falling on (下) many grasses (衆草), a few clouds (微雲) float (巻) in the blue sky (碧空). For whom will come down (為誰来) a ray (孤光) of sunlight? Probably (似) come for you and I (為我與君).
作者 : 3.岡村大
掲載 : 2017/01/06 上に戻る
182 囘雁高飛
囘雁高飛(張仲素)
篆書
書刻 水桜板 枠浮出彫
金箔押 34×18
出典 張仲素
制作 2016 12月
番号 大00182
張仲素の「囘雁高飛大液池」から四字取った。この板は極めて稠密でピンク色を呈している。
箔のようにメタリックなものは光線の当て方によって変わるので私のような素人が太陽光のもとで写しても金が金色にならず、銀色になったりする。板の発色はこのとおりでうまく色が出ているが、「飛」はダメである。地の浚いは丸彫りに白緑を施した。
「書道コラム 333」に「制作中のひとり言」として少しばかり述べておいたのでついでにお読みください。
作者 : 3.岡村大
掲載 : 2016/12/18 上に戻る