岡村大の作品
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山城の斜路 杏花香る

山城の斜路 杏花(きょうか)香る(李商隠)
読んで字のごとく山道を登っている。どことなく漂うアンズの花の香り。なまめいた詩を得意とする李商隠らしい場面設定である。
この板は塩地(しおじ)という。木目が細かく美しく、書刻にはうってつけの良材である。目模様を出すために蘇芳染めを施した。ケヤキと同様、脈管に染料がしみこみやすいので、材のままよりも年輪がくっきり浮き出る。蘇芳染めについてはすでに書いたと思うので、省略するが、赤く発色させるにはミョウバンを用いる。
隷書 書刻 小額 塩地板 彫込 蘇芳染 33×37.5
出典 李商隠
東京 K氏蔵
番号 大00029
作者 : 3.岡村大
掲載 : 2008/12/14
緑陰幽草

緑陰幽草(王安石)
緑陰幽草は花時に勝る、と初夏の時節を讃えた詩。
幽草は名もない草、木陰にひっそりと茂る草のこと。日本では雑草という言葉があって、幽草とはいいがたいほど繁茂するので、「幽」という字に違和感を感じてしまうのであるが、大陸は日本ほど日当たりがよくないせいか、たけだけしい雑草のイメージはないらしい。
板はケヤキである。蘇芳染めをほどこしてあるので少し紫になっている。ケヤキは杉とは逆に、年輪の部分に脈管が走っているので、年輪がくっきりと染まる。染めるにはまことに好ましい板なのである。文字には水晶沫を入れた。
行書 書刻額 ケヤキ板 蘇芳染 彫込
20×55
出典 王安石「初夏即事」
東京 S氏蔵
制作 2001
番号 大00028
作者 : 3.岡村大
掲載 : 2008/11/28
白鷺一足を拳(ま)げ
白鷺一足を拳(ま)げ
月明らかにして秋水寒し(李白)
白鷺が月あかりの中に片足を上げてスラリと立っている。秋の水もめっきり寒さを増した。
「拳」という字は手偏にしてこのようにも書く。「挙」ではない。「まげる」という意味。そういえば拳法ではこぶしをまるめて構えている。鷺の持ち上げた足の表現として的を得ている。
この板は竹のようだがよく見てください。節がない。実は皮を剥いだヒノキである。
隷書 書刻 楹聯(えいれん) ヒノキ板 平彫 20×83×2本
出典 李白
番号 大00027
作者 : 3.岡村大
掲載 : 2008/11/13
鳥還りて人亦た稀

鳥還(かえ)りて人亦た稀(李白)
鳥はねぐらに還り、人影もまばら。仕事を終えたあとの安らぎのひととき。
書いた時には見えないが、焼成すると筆ダマリがしっかりと跡を留めるので、思わぬ効果が出る。紙に残る筆ダマリとは異なるわけで、陶板ならではである。ちょっと紙の裏から見たような感じ。あどけない稚拙な味が気に入っている。
篆書 陶板額 弁柄 30×39/14.5×20
出典 李白
焼成 八王子焼窯元 工藤孝生
千葉 I氏蔵
番号 大00026
作者 : 3.岡村大
掲載 : 2008/11/09
獨り痩馬に騎り残月を踏む
獨り痩馬(そうば)に騎(の)り残月を踏む(蘇軾)
明け方の弱々しい月光を踏んで、痩せ馬にまたがった武士が独り野を行く。壮絶な孤独。
ちょっとカッコイイではないか。気概を持って生きるなら、このくらい当たり前だ。
胡桃の板に彫った。
少し台形に文字を浮き出して、文字部の立ち上がりの茶色を正面から見ても輪郭として見えるように工夫した。(実際には輪郭線はない)
そうでないと金箔が地色の胡粉の白に埋没して全体が弱まってしまう。
楷書 書刻 楹額 胡桃板 浮出彫 胡粉 金箔押
天溪研 20×81
出典 蘇軾
千葉 A氏蔵
番号 大00025
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作者 : 3.岡村大
掲載 : 2008/10/24
鳥飛んで邨(むら)は曙を覚え

鳥飛んで邨(むら)は曙を覚え
魚戯れて水は春を知る(張鈎)
自然の変化に敏感なのは小動物たちだ。一番の早起きは小鳥たちで、それを聞いて村人も起き出す。小魚が戯れて小川も春を知る。「小川が春めいてきた」といわずに、「水知春」のわずか三字でスマートに言い切った。
「邨」は「村」に同じ。篆、隷の時代にはまだ「村」の字形がなかった。従って私の「岡村」も篆書や隷書で書くときは「邨」と書く。ときどき「岡部」さんと間違えられる。
篆書 屏風二曲 紙本濃墨 51×91×2面/17×70×2
関防印 陽光
出典 張鈎(ちょうこう)
制作 2001
東京 K氏蔵
番号 大00024
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作者 : 3.岡村大
掲載 : 2008/09/28
瓏月(ろうげつ)

瓏月(ろうげつ)
「ろう」は見慣れない字だが、皓々と明るいこと。陶板に撥水剤で書くと、文字部はベンガラをはじいてくれる。昔は蝋で書いたらしい。筆が固まってどうしようもなかったろう。今はサラリとした撥水剤があるので大いに助かる。
行書 陶板額 弁柄字抜 16×17
焼成 八王子焼窯元 工藤孝生
番号 大00023
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作者 : 3.岡村大
掲載 : 2008/09/21
青山 北郭に横たわり

青山 北郭に横たわり
白水 東城を遶(めぐ)る(李白)
城壁に囲まれた町の北方には青山が横たわり、城壁の東側には川が白く流れている。青と白、山と水、北と東、対句の妙。横と遶は静と動か。
関防印は「大観す」としたが小さくて見えないでしょう。
隷書 書軸 紙本濃墨
44×130/34×66
出典 李白
制作 2001
東京 K氏蔵
番号 大00022
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作者 : 3.岡村大
掲載 : 2008/08/21
平々凡々

「平凡」だと平凡だが「平々凡々」とすると、おどけた味があって面白い。
これは「橡(とち)の木」で、どちらかと言えば渋い板である。書刻にはこのような地味な板はあまり使われない。お盆や食器にはよく使われる。
篆書 小額 書刻 橡板
彫込 拭漆仕上
18×30
制作 1999年
東京 K氏蔵
番号 大00021
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作者 : 3.岡村大
掲載 : 2008/07/25
誰か能く斗水を借し・・・

誰か能く斗水を借し 轍中の魚を活取せん(寒山)
道路のわだち(轍)にたまった水の中に泳ぐ魚がいる。干上がるのは時間の問題だ。どなたかお願いです。ひしゃく(斗水)を借りて掬い上げなくちゃ。
戦車のわだちのなかにあえいでいる難民がある。地球はあいかわらずキナくさい局面を脱していない。
「轍中の魚」は寒山のフィクションかと思っていたら、大陸では実際にあるという。個展のあと「雨期の長春で、本当に荷車のわだちに泳ぐ魚を何度も目にしました」というお手紙をいただいた。
篆書 扁額 書刻 エンジュ板 鉈彫 126×22
出典 寒山
神奈川 S氏蔵
番号 大00020
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作者 : 3.岡村大
掲載 : 2008/07/19
