4-13 扇面考 扇面の歴史 5 水墨画との協調
扇子は優雅なアクセサリーで贈答品、お祝い品、記念品などに使うこともできます。今でもお能の「道成寺」などの「お披き」(始めて大曲に挑むこと)には、手書きの絵のついた舞扇を京都の扇子屋さんに注文してシテ方が配ることがあります。
貴族ばかりでなく庶民も分相応の画家に注文するなり、買うなりすることができ、扇子はまたたく間に普及しました。紙製品、竹細工など工芸技術の先進国であった中国が、いつまでも日本からの輸入に頼っているわけがありません。次第に日本のお株を奪う勢いになりました。遠くスペインにまで中国製の扇が波及しました。このエキゾティックな小道具はのちにフラメンコなどでは主要な舞扇になります。
宋代の画家にとって紙貼り扇は極めてハンディな表現形式であり、絹本仕立ての本画のような重厚さはないものの、四角にトリミングされた紙面にはない新鮮な空間が魅力でした。
ここで宋代というのは水墨画が山水の「空気」を描きはじめた時代であったことを思い起こす必要があります。「気」を描くということは形態のすべてをクリヤーに描き尽くすのではなくて、「描かない部分」いわば「ぼかし」の部分、つまり余白を紙面に取り込むということです。このあとで中国の書の特質にもふれるつもりですが、今私がのべた「余白」という言葉を記憶しておいてください。
さて画には「賛」がつきます。「賛」というのは書が画と同等の価値を持つ漢字文化の国においては、「画賛」として画の片隅に、その山水に触発された詩文を文人がつける即興的な遊戯です。扇子は画と賛を表裏に住み分けることを可能にします。扇面に書を書くという文化は、中国にあっては書人が考案したというよりは、画家に触発されて画賛が表裏に分業化して出来上がった様式ではないかと思われます。
掲載日時 2009 年 12 月 11 日 - PM 08 : 40
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