4-11 扇面考 扇面の歴史 3 桧扇
桧(ヒノキ)の薄い板片を下方で留めた「桧扇(ひおうぎ)」は、日本で、とりわけ遣唐使が廃止された(894年)あと、宮廷の儀礼の中に組み込まれ、礼服を身にまとう際の正式の持ち物になったことが知られています。「国風文化」の一翼を担うことになったこの桧扇こそ、扇子の起源としてよいのではないかと思います。
桧は日本を代表する良材です。笏(しゃく)も恐らく桧で作られていたでしょう。この礼式用の扇は、涼を求める夏扇に対して冬扇と呼ばれ、のちには夏冬を問わず式服に伴う常備品となります。天皇、皇太子用は蘇芳染(すおうぞめ)の赤扇、公卿、殿上人は染めない白桧扇というステイタスシンボルでもありました。
この宮廷儀礼は女性にも波及しました。「みやび」を演出する重要な小道具として、目ざとい女性はこれを見逃しませんでした。こうして桧扇は儀式のカンニングペーパーという用途からも開放され、和歌を書き添える恋の小道具、自分の顔を謎めかしく隠して、桧板のスキマから殿上人の貴公子を垣間見る品定めの用具として、後世の扇の文化が一挙に花開いたのであろうと思われます。
これを女房桧扇(にょうぼうひおうぎ)と言いますが、やがて吉祥図に飾られ、「三重がさね」が「五重がさね」と数を増し、綴じ糸が紫や赤に染めなされ、外側の板が銀製になるなど、ファッション化を進めたに違いありません。
掲載日時 2009 年 12 月 06 日 - PM 03 : 05
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