4-2 扇面考 扇面と成扇
折り畳まれた扇をひろげ、その紙の部分を「扇面(せんめん)」と言い、骨のついた扇子本体を「成扇(せいせん)」と言って区別します。つまり書画のかかれた扇子は成扇であり、骨を取り除いて絵や書の部分をあらたに表装したものが扇面なのです。したがって表裏に絵と字が書かれた成扇から、二枚の扇面がとれるわけです。
日本では実際の扇になる前の扇形の料紙を扇面としていますが、本来は実際の扇子を解体して、せっかくの絵や字を保存しておくために表装、掛け軸として鑑賞できるようにしたのです。今日ではこのような扇面の収まった軸をひとつの作品として作るため、折り目のないマッサラな扇面料紙が売られています。
高級な扇子は書画用の高価な宣紙(せんし)、蜜蝋色の地に細かい筋の入った湘妃竹の扇骨とか、白檀とか、精巧な彫り物のついた象牙などに技巧をこらし、工芸品として発展しました。また革命前の北京では、行商の扇子売りがこうした扇子の痛んだ箇所を修理する工人も兼ねて街を歩いていたといいます。
それにしても扇面の作品は書道全集などを見てもなかなか取り上げてはいません。かな作品の色紙は多少はありますが、扇面は名品を見ることができません。書家や画家の余技というイメージがあること、携帯品という側面もあって、一つの作品として重きを置かれていないのだとしたら、それは間違っています。なぜなら四角い紙に書くのとはまた別の創作力、力量が要求されるからです。そのことを、おいおい書く側の視点で述べたいと思います。
(カットは天溪 隷書 寒山詩 1958年)
掲載日時 2009 年 11 月 29 日 - 午後 03 : 33
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