5 筆録の系譜 15)ベルリン・パピュロス
もうひとつ同じような発見と失望があります。
1901年ボルヒャルトがカイロの奥地で入手して、ベルリンへ送った「テアイテトス」の注釈本です。これはベルリン・パピュロスと呼ばれます。紀元2世紀のはじめ頃と推定された古写本です。
果たしてその調査結果はどうだったでしょうか。やはりこれも期待外れで、現在ある中世写本と大差のないことがわかったのです。これでは紀元2世紀の古さに意味がなくなります。しかし逆に、9世紀の中世写本の信用性が高まったともいえます。
ピートリー・パピュロスと、このベルリン・パピュロスによって得られた結論は、初期の筆写本の資料的価値が低いこと、中世資料がかなり古くまでさかのぼり得ること、という二つです。
この二つから、まだ「音による伝承」が色濃く残っている時代の写本というものが、いかなるものであったかが浮かび上がってきます。
初期の筆記者は文字をせいぜい暗記の補助手段くらいにしか考えておらず、備忘用のメモが残ったと云わねばなりません。
プラトン時代の書物は、
「すでに耳で知っている文章を確認するためのものであることを物語る。いわば備忘用である。」
と田中美知太郎先生の前掲書(pp.201)にある通りです。
掲載日時 2010 年 08 月 19 日 - PM 01 : 04
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