4-28 扇面考 瓦当文(がとうぶん) 1
扇面という変形紙面をめぐって日本の美意識の特徴を考えてきました。これに対して中国の成扇を見ると、ひたすら単調な構成を追及し、余白にはあまり注意を払っていません。しかし中国の長い文化を見るとまだ見過ごしているものがあります。
いささか扇という素材にこだわりすぎたかもしれないので、このエッセイの最後に、時代をぐんとさかのぼって漢代の瓦当(がとう)について述べましょう。
お寺の屋根瓦を見ると、平瓦と丸瓦が交互に組み合わされています。これは中国建築の様式です。軒の先端にある丸瓦は、日本では「鐙瓦(あぶみがわら)」といいますが、中国では「瓦当(がとう)」と呼びます。見上げた時にまず目にはいるので、ここに文様や文字を入れます。この文字を「瓦当文(がとうぶん)」と言って、秦、漢時代の書の資料として重要なものです。
注目してください。ここには円を二等分、あるいは四等分した「扇面形」があり、そこに文字(漢代の篆書)が収まっています。もちろん扇などなかった時代です。円弧に字を収めるという意味では、扇面のプロトタイプとも言えるものです。これを見逃す手はありません。
右の例は「馬」一字が大きく置かれ、あとは模様をあしらっているだけです。中央の丸(瓦では臍のような出っ張り)の部分があるので、上下の円弧に囲まれた図形は、馬の部分だけを見れば立派に扇面形となっているではありませんか。
竹簡のような細長いものに上から下へと書き下ろしていた時代で、それが文字資料のすべてかといえば、このように円弧に書いたものもあったのです。
※図は伊藤滋編『秦漢瓦当文』より。
掲載日時 2010 年 02 月 12 日 - PM 03 : 54
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