564 國譯漢文大成 正續(3)図柄は誰の作か
背表紙等の図柄は漢代の石刻画を粉本にしています。後漢に盛期を迎えた墳墓の壁画で山東省の武氏祠、河南省の打虎亭漢画、南陽漢画などが有名です。傘蓋と虎の図を探ってみました。このような中国の発掘資料の拓本がまだ充分に紹介されていない大正期に、それらを参照していることに驚かされます。また模様には殷周青銅器の模様を研究したあとが見られます。画家であれば相当の中国通です。しかしこれも誰の作か分かりません。最右翼にいるのはやはり中村不折です。しかし確証はなく、鳴鶴と共同制作したことになるのも解せません。あるいはこの仕事がきっかけになって鳴鶴と袂を分かつことになり、間に入った鶴田久作は双方の仕事を「なかったことにする」と窮余の一策を考え出したのかもしれません。画家、書作家を高々と表示したほうが断然宣伝になるでしょう。それが全く「秘匿」されたという不自然な成り行きは特殊な事情が背後にあったことを物語っているのではないかと、ゲスの勘ぐりだったらむしろ幸いですが。
掲載日時 2021 年 08 月 26 日 - 午後 05 : 13
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