62 展覧会 2)会場空間
展覧会の会場はいわば非日常的な空間です。今回は42点の作品を陳列しましたが、普通の家庭で、これだけの作品を飾る応接間を持っていることはまず稀でしょう。しかも、私の作る空間はすべて書作品です。書を飾ることすら少ないのですから、これは普通の人にとって「異質な空間」に闖入してしまった、という印象をまず与えます。
私はこれをビックリハウスに喩えて、「岡村ワールド」とひそかに名づけています。銀座を歩くさまざまな人のファッションを見、趣向をこらしたモダンなブランドショップのウインドウを眺めつつ、この会場に足を踏み入れると、そこには全く銀座通りとは別の空間が用意されており、一種異様な、人によっては「とんでもない所にまぎれ込んでしまった!」とばかり、逃げ出したくなる衝動にかられることもありましょう。それは非日常的な世界にほかならないからです。
実は、それこそが私の意図するところなのであって、「なんじゃ、これはコーヒーのチェーン店と同じじゃないか」と思われたら終りです。どうしてか、というと、書作は他のもろもろの芸術と同様、ひとさまに「夢」を与える役割があるからです。「夢」というと情緒的に聞こえますが、芸術の持つ「生気、生命力、活力」であり、それがより集まって、怠惰に押し流されてしまう日常空間とは画然と分けられる別世界を展開するのです。
幸い私の会は「漢字」と「かな」の二つの専門分野があり、「書刻」という立体的な書作品も多く、書作の表現手段には事欠きません。そこで作品展示には、あらかじめ会場の縮小図を作り、作品の大きさ、色彩、書体などをそれに合わせて並べながら、「岡村ワールド」の演出にたっぷり時間をかけます。
なんだか不景気な世の中ですから、せめて会場くらいは生き生きとしたいものです。
掲載日時 2010 年 05 月 02 日 - PM 02 : 55
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