37 木の文化(14)奈良時代の色がよみがえる - 書道コラム

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37 木の文化(14)奈良時代の色がよみがえる

 媒染剤(ばいせんざい)とはまことに不思議な存在で、「ミョウバン(明礬)」を使うと赤色を呈します。かなり鮮やかな赤で「これが同じ板か」と目を疑いたくなります。奈良時代の赤がみるみるうちによみがえる、これはちょっとした感動です。参考私の作品番号00013 下のほうにスクロールしてください。

 硫化第一鉄は緑色の結晶で、買うときに「化学的に不安定な薬品なので冷暗所に保存してください。保存が悪いと硫化第二鉄に変り、媒染力を失います」と忠告されました。そのときは、そんなものか、ようやく入手できてよかった、と胸をなでおろすのが先で、ウキウキしていたのです。この小さな薬壜を手に入れるために、どれほどあちこちの薬屋めぐりをしたことか。(今はどこもかしこもドラッグストアとなって、薬品を扱っていないのです。)

 その後おちついて考えると、奈良時代の人は一体どこで、どのようにしてこの「化学的に不安定な」クスリを得ていたのでしょうか。今でこそ純粋な結晶を私は買うことができます。しかし化学薬品などない時代に、どこを掘れば出てくるのか、取り出して運んでいるうちに第二鉄にならないのか謎だらけです。「温泉に落としたときに偶然発見したんじゃないか」と言う友達もあり、とにかく温泉のような自然物の何かを使ったに違いない、という程度にしかわかりません。

 古代人の知恵は私が想像するよりはるかに上のレベルにあったのではないでしょうか。この高度な技術力の成果が正倉院に残っているのに、その技術は残念ながら継承されませんでした。タンスや家具を見ても「蘇芳染めダンス」などは皆無です。赤い蘇芳染め櫃(ひつ)を正倉院では「赤漆(せきしつ)の櫃(ひつ)」と記しています。漆とは全く無関係なのに、この赤さは漆塗りのように見えたのでしょう。

 私は日本で「板染め」が途絶えた理由の一つに「漆」の存在が大きかったのではないか、と考えています。

掲載日時 2009 年 05 月 01 日 - PM 08 : 12

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