7 書は日用品(7)誇りうる伝統は
話が書道史にかたむいて、気楽に読み流せるコラムがちょっとつまらなくなりましたが、このあと秦の始皇帝まで書かないと「日用品」のテーマが終わらないのでもうすこし我慢して読んでください。
話は周の王朝が、征服した前王家の専権事項たる文字を、寛大にも踏襲したところまででした。
文字は特殊な訓練を受けた神官しか操作できないものですから、神官つまり文字官僚を殺すわけにはいきません。その組織や建物である神殿など、システムそのものも温存されたでしょう。きわめて狭い密室の珍物にすぎない文字を抹殺しなかった周の意図の一つは、もう見え見えです。さきに述べたチョンボが今度はわが方に使える、進物効果も大きい、という打算があったはずです。
しかしそれだけで反対派を説得できたでしょうか。
殷の文字を使わずに、まったく別の周文字を創作しても、いや、いっそひと思いに、表音文字に転換してもよかったのではないでしょうか。
もしそうなっていたら、周は「新しい征服者はそのつど新たな文字を発布する」という、とんでもない歴史のいとぐちを作ったかもしれないのです。
文字の継承は、前の王朝の文字遺産をそのまま受け入れる姿勢がなければ、誇りうる伝統にはなりえません。もちろん私の今の存在など、はなはだあやういものになっているでしょう。
その意味で、周王朝が「継承しえた」真の理由がはっきりしないのは困りものです。
掲載日時 2008 年 04 月 27 日 - PM 10 : 06
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