35 木の文化(12)木目(もくめ)の美しさ
日本のあちこちにアメリカ軍の兵舎があった時代、まだ占領軍という言葉が生きていた時代はそれほど昔ではありません。私の学生時代はそんな過渡期で、教養部の教室は兵舎を払い下げたものでした。どこもかしこも安物のペンキで塗りつくされていて、アメリカさんはペンキ好きだなと思ったものでした。
ペンキは木目を覆いつくしてあとかたもなくしてしまいます。もとが木であることが恥ずべきものであるかのように、廊下も壁も、椅子も机も塗りまくってしまう。これは石の文化のやりかたなのかもしれません。私はこの安っぽい住まいを見て「おペンキ文化」と心の中で揶揄していました。
その後40年。アメリカの「おペンキ文化」が日本中を塗りまくっています。ホームセンターのペイント類は数知れず、木から木らしさを奪っています。日本の料理は素材を活かすことにあると言いますが、木という素材を隠す塗装ばかりに頼るのは考えものです。
美しい木目を愛する習慣のない国なら仕方がないとして、日本は稀に見る木目の産地なのですから、木肌を大切にしたいものです。少し茶色がかった透明な生漆や、透明ウレタン、薄めのオイルステンなど、木目を活かす塗料もあります。私は日本において「板染め」の技法がほとんど壊滅してしまったことに驚きを感じています。塗るのではなく「板に染める」という方法が、奈良時代には厳然としてあり、それは正倉院に残っています。ところが、いつの間にか「染め」は布の世界だけのものになり、板への染めは途絶えてしまいました。
染めは木目ごと染まり、むしろ木目を際立たせます。正倉院に残る「赤漆(せきしつ)」は赤い漆を塗るのではなく染めたものです。布ではなく板を染めるという言葉を「初めて聞いた」という方もあろうかと思い、次回から「板染め」について書くことにします。
掲載日時 2009 年 04 月 19 日 - PM 02 : 01
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