33 木の文化(10)まだまだ木は生きている - 書道コラム

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33 木の文化(10)まだまだ木は生きている

 2004年の私の個展のとき、恒例になっている父の未発表作品を数点加えました。そのときのことです。所蔵者のかたがお持ちくださった作品を見て「あ、やっぱり」と思いました。父が死んで10年、この作はそれより15年ほど前ですから、かれこれ25年近く経っています。下の写真がそれです。写真ではおわかりにならないと思いますが、ガラスの裏に細かい水滴のようなものが一面についていたのです。

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天溪作 麦は老いて桜桃熟せり(蘇軾) 作品集

 天溪は板を保護するつもりで、額装にはすべてガラスを入れました。額縁屋はプロだから表裏をすっかり密閉します。ガラスは隙間なくはめこまれ、中の空気は密封され、その状態で壁にかけられていたわけです。
 ガラスの裏と言いましたが、つまり板に向かっている面に、水滴ではなく微細な粒々がついていたのです。それも驚くなかれ、全体にではなく「文字の形に」です。

 思うに、板はまだ生きており、彫られたところ、つまり傷つけられた文字部から気体を発し続け、静かに静かにガラスにそのエキスを定着させていたのでありましょう。このような現象はこの作品のほかにもあり、天溪の死後、作品集のために撮影する段になって、ガラスを外した作品がいくつもあります。
 板は色を塗られても呼吸をする。わたしはこれに鑑みて板には極力ガラスやアクリル板を入れないことにしています。

掲載日時 2009 年 04 月 02 日 - PM 09 : 53

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