476 平成 - 書道コラム

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476 平成

 1989年1月7日、小 
渕恵三官房長官が「平成」と新元号を掲げた。筆の最後の穂先がチョロリと左に曲がっている。「平」の最後と「成」の二か所。 これは「書きグセ」ではなく、穂先の洗い方が悪く、数本が固まったまま書いたのだ。あわてて放送時間に間に合わせたので、ゆっくり穂先を整える暇がなかったのであろう。どなたが書いたのか知らぬが、プロにはあるまじき失態である。
 元号が変わるとて、この字が再び脚光を浴びて、最近ではたびたび放映されるのでひとこと言っておこう。筆の洗い方もわきまえないような下手クソに大切な字を書かせてはいけないし、放映してもいけない。

 元号が死後の諱(いみな)を兼ねるようになったのは明治天皇から大正、昭和のたったの三代である。明治帝の前の孝明天皇の時代には「孝明」という元号はない。在位期間(1846年3月10日~1867年1月30日)に付けられた元号は弘化、嘉永、安政、万延、文久、元治、慶応と七つもあり、「孝明」は純粋に「諱」である。
 今上天皇は退位して上皇となる。まだ(おかくれになってはいないので)諱はつけられない。したがって「平成天皇」というわけにはゆくまい。つまり明治、大正、昭和と三代続いた「元号=諱」という伝統は「死ぬまで現役の天皇」だから成り立つので、今上天皇でそれは成り立たなくなるわけだ。
 「元号=諱」と言ってもその伝統なるものはせいぜい明治帝からのことで、明治の岩倉具視や大久保利通が発案したものである。死守するほどのことではない。私はこの際、元号はなくしてくれればよいと思っている。いやなくすに良いチャンスだった、と思っている。
 しかし有識者とやらが元号候補を選び、それを安倍首相が天皇に報告し、菅官房長官が発表するというものものしい方式が進行しつつある。繁雑なだけで少しも役に立たないこんな悪習はさっさとやめた方がよろしい。 

掲載日時 2019 年 03 月 30 日 - 午後 09 : 09

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