57 立ち合い
貴乃花新理事と朝青龍引退が重なって相撲の話題でもちきりです。私も相撲が好きです。私が初めて見に行った時の横綱は照国万蔵でした。(年がわかりますね)。この前国技館に行ったのは、貴乃花が引退する前の場所でしたから、大したファンではありません。ですから、今取りざたされているテーマについてとやかく言う資格はありません。
私が相撲をテレビでよく見るのは、書道と似ているところがあるからです。え、どうして? と思ってくださればこのコラムは半ば成功です。コラムの面白さは意外性にあるからです。
相撲は立ち合いを大切にします。立ち合いがすべて、という人もあります。この一瞬で勝負が決まる、といわれています。そのために行司は軍配を反して、その「瞬間」を力士の呼吸に任せます。「ヨーイ ドン」ではないのです。立会いの瞬発力を最大限に引き出すにはしっかりと「仕切って」立たねばなりません。仕切りが不充分では腰が高くなって、相手の低い重心に当たられたらひとたまりもありません。
これはお習字の「起筆」にも言えることです。起筆というのは紙に筆を下ろす最初の動作で、始筆とも言いますが、八画の字には八回の起筆を伴うわけで、「始筆、終筆」とは区別して「起筆、止筆」と言っておきましょう。おもむろに筆を下ろして、まず点を打ちます。そのときしっかりと腰を入れます。筆の重心を点の中央に移動させるのです。打ったばかりの点は重心が筆管の真下、点の下方にあります。このまま(腰を入れずに)線を引くと線の下辺に力が片寄り上辺が浮いてしまって、まともな線にはなりません。そこで、重心をちょっと上にずらせて穂先が浮くのを防ぐわけです。どうですか。筆を動かす前にしっかりと「仕切って」いないと線に負けるのです。昔の教本には筆の腰の入れ方を図解していましたが、このごろはこれを知らない人も多くなりました。
立つ前に充分に腰を入れて仕切る。これは運筆の前にしっかりと腰を入れる「起筆」と同じです。
掲載日時 2010 年 02 月 06 日 - PM 02 : 28
