55 大道芸
新年おめでとうございます。年があらたまったところで話題を変え、今年は時々の話題でコラムを綴ることにしましょう。
年末に恒例の「流行語」のお披露目がありました。悪名高い「漢字検定」の行事である清水寺管主による「新」の大字揮毫をテレビで見た方も多いでしょう。毎年不思議に思って見ているのですが、今年も紙をキャンバスのように立てて書いていました。腕を伸ばして、上のほうから書いていけば、当然紙に吸収しきれない墨は下に垂れます。書き終わると下辺は墨がダラダラと垂れ下がって紙面を汚しています。
書は墨水を扱うものですから、紙を平らに置かねば書けません。筆を真横に構えてしまっては、側筆(そくひつ)の下部(筆の下腹)に墨がたまってマトモな字は書けません。紙は水平、筆は垂直が原則です。書道全集の古今の名筆を見て下さい。ダラダラ墨の垂れた作品は皆無です。あれは字ではなくヨゴレだからです。よごして平気な人の作品を誰が飾って床の間にかけるでしょうか。
恐らく背景となる清水の舞台を同時に画面に納めたいカメラマンかディレクターかの要望でしょう。だったら、足場を組むなり、クレーンでカメラを吊るすなりして、そっちで工夫しろ、と断固拒否すべきです。見場を優先してカメラマンのいいなりになるのは大道芸のすることで、書に向かう人の姿勢ではありません。
大道芸としてのパフォーマンスは見ていて面白いことも事実です。箒のような大筆を振り回して、足跡のつかないように走り回るのも容易ではないでしょう。ただし、清水寺の揮毫も含めて、書くことを見世物にする芸当に「書」はありません。そこを踏まえてよく見物しましょう。滑稽で、投げ銭を与えたくなります。
掲載日時 2010 年 01 月 08 日 - PM 10 : 02
