これでさいごのひとやすみ(10)
オットセイじゃあるまいに
百人一首のカルタに描かれているお姫様たちは、どうしてそろいも揃ってわけのわからない姿勢をしているのでしょうか。衣裳のなかに埋まって顔だけ出ているといった感じ。着ているとも思えません。この様子から判断すると、みな寝そべっているように見えます。
まさか姫君がたが皆オットセイのような姿態でいたわけではありますまい。恐らく十二単衣のデッサンをちゃんとしなかった画家の怠慢だと思います。滋賀や京都には十二単衣を着せてくれる観光地があります。十二単衣の下は長袴ですから、足はかなり自由で、ゆったりとしていたようです。正座は江戸時代になってから、立膝は韓国の坐り方で、平安時代にはどちらもなかった風習なので、足元のお行儀はよろしくなかったかもしれません。
十二単衣の着付け教室を見学したことがあります。上衣を八枚くらい重ね着しますが、何と紐は最外衣の帯だけ。順繰りに上に着せて、下の紐を抜き取ってゆくのです。これにはビックリするとともに、そうでなければお腹のまわりが横綱みたいになってしまうでしょうから、なるほどと納得しました。面白いことに、最後の帯を解けば、スルリと蝉の抜け殻のように抜け出ることができます。時間にして「瞬時」です。なるほど、そうだったのか、と想像をめぐらせているかたへ、念のため申し添えますが、抜け出たお姫様は白い衣裳に鮮やかな緋色の長袴というお姿です。神社の巫女さんを思えばよろしい。
せっかくのお姫様なのですから、だらしなく寝そべっているのでなく、ちゃんと腰掛けたり、背筋を伸ばした姿に描いてほしいものですね。最後のひとやすみなので肩のこらない話題になりました。
掲載日時 2009 年 11 月 20 日 - 午後 01 : 58
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