97 こぬ人を

97 こぬ人を まつほの浦の 夕なぎに
焼くや藻塩の 身もこがれつつ (権中納言 藤原定家)
【現代語訳】
来ぬ人をひたすら待っている私は、松帆の浦の夕なぎの時になって焼かれる藻塩草のように、じりじりと恋こがれて身もだえしているのです。
【文字表記の注』
定家にとって「待っても来ない人」とは、失われた過去の「和歌文学最盛の王朝時代」にほかなりません。「来ぬ人」ともうすでに見極めはついているのですが、そうと知りつつ、なお和歌の道を歩む人の孤独がダブルイメージとしてせまってきます。最後から三番目のしめくくりの歌として、悲痛きわまりなく、暗澹とした幕が下りようとしています。
作者であり百人一首の編者「ごんちうなごん ふぢはらのていか」の絶唱です。歌のひびきから、まっとうな散らし書きにならざるを得ません。
掲載日時 2009 年 11 月 20 日 - PM 01 : 46
