70 さびしさに

70 さびしさに 宿を立ちいでて ながむれば
いづこもおなじ 秋のゆふぐれ (良暹法師)
【現代語訳】
寂しさもきわまって、庵を出て気晴らしに外に出たら、何のことはない、外だってどこもかしこも寂しい秋の夕暮れ。やはり秋はこれだ。
【文字表記の注】
3、4句を下げました。全体がV字形になります。「いづこ」を「いづく」とする本もあります。上代には専ら「いづく」が用いられましたが、平安時代になって「いづこ」も併用されるようになりました。「源氏物語」も「いづこ」を使っています。「いづくもおなじ」だとちょっと古風なのでしょう。ここは「いづこ」を採用しています。
変化を期待して見渡したら、結局同じだったという経験は誰にでもありそうです。現実と向き合うしかない、という諦念でもあるし、前向きに「それも悪くはない」のでしょう。「秋の夕暮れ」を和歌の美的世界の象徴にした定家の観点を考慮して、ここは前向きの歌としてとらえ、秋の発見、再評価の歌としましょう。
作者は「りやうぜん ほふし」。
掲載日時 2009 年 08 月 02 日 - PM 04 : 47
- 前の記事:69 あらしふく
- 次の記事:ここでひとやすみ(7)
