60 大江山

60 大江山 いくのゝ道の 遠ければ
まだふみも見ず 天の橋立 (小式部内侍)
【現代語訳】
天の橋立までは大江山を過ぎ、幾野を越えてかなり遠いので、まだ踏み越えていませんし、母からの手紙もまだ届いてはおりません。
【文字表記の注】
詞書きがないと「まだ文も見ず」が何のことやら判然としません。歌は本来この31文字で完結すべきものですが、当意即妙で応答した場合にはその返歌の冴えが評価されるのです。そこで「文字表記」を云々する前に、有名なこのいきさつをのべると、歌合せに出ることになった彼女に「遠くにおられる母上に相談しましたか」とからかった定頼。「母の手紙などは見ておりません。私の実力で勝負します」。とやりかえした歌で、母は恋多き女性・和泉式部という大スターです。
「あまの橋立」はその地名だけで和泉式部を連想させたことでしょう。才気あふれる歌にはやや多く漢字を用いて、毅然とした書き方にします。
作者は「こしきぶのないし」。母の艶名に翻弄されたお気の毒な才媛でもありました。
掲載日時 2009 年 07 月 31 日 - 午後 01 : 09
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