50 君がため

50 君がため 惜しからざりし いのちさへ
長くもがなと 思ひぬるかな (藤原義孝)
【現代語訳】
あなたのためなら、死んでも惜しくはなかった命です。でも思いをとげた今は、少しでも長く生きたいと思うようになってしまった私なのです。
【文字表記の注】
「思ひけるかな」とする本もありますが「ぬる」を採ります。
「惜し」は「をし」と書きます。「いのち」は「ゐのち」とは書きませんので念のため。
「思いをとげた今では」とは一言も言っていませんが、それ以外に何がありましょうや。思いをとげたあとで心変わりをする男が多いなかで、この作者は立派です。このように「後朝(きぬぎぬ)」の歌を翌朝女性のもとに贈るのがならわしでした。これを見てひと安心しつつも「うまいことをおっしゃって、だまされませんわよ」と返歌するのが、これまた付加価値を高める女性の手管でした。
作者は「ふぢはらのよしたか」。21歳という若さで急死したので、読む人に「惜しい命」を連想させ、なかなか効果的な選歌です。
掲載日時 2009 年 07 月 25 日 - 午後 03 : 32
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