ここでひとやすみ(1)
なだらかさが和歌の特性
日本古来の和歌は「ひらがな書き」が基本です。『高野切(こうやぎれ)古今集』(第2種。11世紀中ごろの書)には22の文屋康秀の歌が次のように書かれています。
ふく可良に あ支の
(から) (き)
く左支能 しをるれ者 むべ
(さきの) (は)
やま可世を あらしてふらむ
(かせ)
上記の漢字は便宜上もととなった漢字をあてはめただけです。つまり「か」というひらがな以外に「可」という漢字の草書からつくられた別の形のひらがなを使っていますよ、という意味です。このように私たちが知っているひらがな以外のひらがなを「変体がな」と呼んでいます。パソコンには変体がなのフォントがないので漢字活字を使って下にカッコで表すしかないのです。
書道では濁点はつけません。それでわかる、という考えです。今では解り難い事もあるので便宜的に「しをるれば むべ やまかぜ」として、「てふ」という音便(おんびん)を「といふ」とすれば、読みやすくなります。
さらに漢字の補助を借りれば
吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を嵐といふらむ
となり、やや長さは短縮できますが、やわらかいかなの線と、歌の響きがなだらかではなくなって、硬い感じになります。平安時代の女性の美意識がそれを避けたのです。
試みに78の源兼昌の歌を漢字をふんだんに使って書いてみましょう。
淡路島通ふ千鳥の鳴く声に幾夜寝覚めぬ須磨の関守
さすがにこれではゴツゴツですね。漢字の使用はほどほどに。
掲載日時 2009 年 06 月 27 日 - PM 03 : 46
